内容説明
メディアと権力のダイナミズムをとらえなおす。薬害エイズ事件、桶川ストーカー事件、栃木リンチ殺人事件、ウォーターゲート事件―メディアが社会を動かすとき、その背景にジャーナリストの「熱い闘争」がある。報道の構造と力を、新たな理論モデルの構築を通じて描きだす注目作。
目次
序章 ジャーナリズムの政治社会学
第1章 ジャーナリズムが社会を動かすメカニズム―政治社会学的ジャーナリズム研究と正当性モデル
第2章 ウォーターゲート事件―ジャーナリズムの神話
第3章 栃木リンチ殺人事件―「主張」を「事実」にする力
第4章 桶川ストーカー事件―ジャーナリズムの界の力
第5章 薬害エイズ事件(1)―孤立したスクープ
第6章 薬害エイズ事件(2)―情報戦とジャーナリズムの界
第7章 民主主義社会とジャーナリズムの課題―まとめと補足
著者等紹介
伊藤高史[イトウタカシ]
創価大学文学部教授。1967年、東京生まれ。学習院大学法学部卒、慶應義塾大学大学院法学研究科にて法学博士(1998年)。社団法人日本新聞協会職員(1991~2004年)、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所助教授(2004~2006年)を経て、2006年から創価大学文学部助教授。2010年4月から現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぷほは
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ジャーナリズムを批判的に捉えるのではなく、あくまでその機構を政治権力との関係から論じようとしている。そのためジャーナリズム自身の権力作用やそれに対抗する受け手の能動性を強調するカルスタ的メディア研究と異なり、かなりまっとうな社会学の書となっている、ように見える。メディア世論と外部世論の分節は、世論と輿論の区別とそんなに違わないような気もするが。事例はウォーターゲート事件、栃木リンチ殺人事件、桶川ストーカー事件、薬害エイズ事件の、事件発生と社会的制裁の間の報道過程を追尾している。さて問題は「界」の未規定性。2015/12/22
peisaku2014
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報道が直接的に権力者や市民を動かしていくわけではないが、様々な連関の複合として社会学動いていく、というモデルを提示している。この正当化モデルは、なかなか興味深かった。ジャーナリズム論としても、政治社会学の基礎的パースペクティブを学ぶ意味でも、意味があった。2014/07/29