内容説明
他者への関心から芽生える複雑な情動―。嫉妬・妬み・羨望の情動の生成から表面化までのメカニズムを社会学的・社会心理学的な視角から体系的に探る試みを展開。“嫉妬”の正体の社会学的解剖。
目次
第1部 嫉妬・妬み・羨望に関わる基礎理論(社会化と人間の社会性;社会的比較と自己の位置づけ;社会的交換概念の適用;社会的統合におけるダイナミズム)
第2部 嫉妬と羨望の構造(嫉妬の多義性;嫉妬・妬み・羨望における過程と局面;嫉妬・妬み・羨望における願望と信念;嫉妬・妬み・羨望の構図と構成関係;ノンフィクショナルな事例にみる嫉妬と妬み ほか)
著者等紹介
石川実[イシカワミノル]
1937年島根県に生まれる。専門分野は理論社会学、家族社会学、社会心理学。京都大学文学部(社会学専攻)卒、同大学院文学研究科博士課程中退。九州工業大学(社会学)助教授、奈良女子大学教授、放送大学奈良学習センター所長を経て、現在は奈良女子大学名誉教授および放送大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アルゴス
1
嫉妬に類する感情を、「嫉妬」「妬み」「羨望」に分類して社会学的に考察する。第一部は基礎論として社会交換論を説明し、第二部で本論として嫉妬と羨望の考察を展開する。社会学的な説明が軸になるために、本筋から外れてしまうことも多い。テーマは面白いのだが、残念感が強く残る一冊。★★☆2017/11/30
HolySen
0
嫉妬・羨望に関する先行研究をまとめつつ、社会心理学の準拠他者・準拠集団理論、認知的不協和理論、社会学の社会的交換理論、正義論(特に分配的正義の話)を用いて嫉妬・羨望という概念を分析している。「妬み」と「嫉妬」とを明確に区別したのは分かりやすいし、情動を認知過程→内的過程→反応過程に分解し、内的過程を関心・評価局面、信念局面、願望局面に分解したのも分かりやすい。また、概念の説明だけではイメージしづらいからか、森鷗外、ラッセル、源氏物語、オセローの例と、文化人類学的な視点から文化差の例も出していて面白い。2015/06/10