感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふみ
34
それぞれにひとつしかない死。死の床にある父を想い、(多分)テロや震災や原爆による死者を想い、その軽重を否定する。季節の移ろいの中で父の死をときおり思いだしては悼む、そんな四年間。2017/07/31
kaizen@名古屋de朝活読書会
26
#短歌 p.11 何なすとなき冬の日を青鈍(にび)のひかりにゆがむ河口まで来つ p.12 葦原を水浸しゆく美しと雲りの下を見つつ来にけり 水の辺に澄み透りたる火は立ちて火にたたずめる人の影みゆ p.14 葦の間に木の舟ひとつ捨て舳先を濁る水に浸して p.15 水のおもてに今日の曇りの移るころ河口に道は尽きむとしたり p159 秋の日の景徳鎮の青白磁月下の肌のごとくし白し 2017/09/22
yumicomachi
3
予備知識から、亡き父への挽歌が多い歌集かと思っていたが、寧ろ死にゆく父の様子を見守る日々が多く詠まれていて、その後に置かれているからこそ〈父のなき息子となりて花桃のひえびえと咲く白に逢ひたり〉のような歌が胸をつく。自然詠などにみられるたしかな写生、集を充たすうつくしい韻律に魅せられた。装丁も素晴らしい。2017/09/13