内容説明
キリストの誕生を告げる星を追って、小さな王は祖国を旅立った。すべての贈り物を苦しむ人々に差し出し、長い年月を費やして、たどりついたのはエルサレム―戦時中ナチス・ドイツとソビエト連邦から死刑を宣告され、亡命先で強制送還の危機に陥った著者の壮絶な体験に根差した物語。
著者等紹介
シャーパー,エツァルト[シャーパー,エツァルト] [Schaper,Edzard]
1908年、プロイセン(現ポーランド)オストロボ生まれ。19歳で最初の小説を出版。ドイツ、デンマーク、エストニア、フィンランドに移住。ナチス政権とソビエト連邦から死刑宣告を受け、逃亡先のスウェーデンにて二重スパイ容疑で拘束される。1947年以降スイスに定住。約70作の小説や多くの物語、考察、演説を遺した。1984年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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paluko
9
救世主の誕生を知らせる星を見て旅立ったのは東方の三博士だけではなかった。「遠く離れたロシアの、ある小さな国の王にも、その光と知らせは届いていました」(3頁)…からはじまる「正直で、子供のような心を持った王」の長い長い旅路。途中、合流した三博士の桁違いの冨と学識に圧倒され、旅の道中で目にする国々にはびこる不正と貧困に涙し、奴隷として尊厳を根こそぎ奪われる人々を救いたい、救世主の統べる世はなぜまだ始まっていないのか? といぶかしみ。そしてついに王が巡り会ったのはおさなごイエスではなく…?!2024/05/01
Marie
1
人生は過酷です。若く意気揚々と船出しても苦難は絶えず喪失の苦しみも襲います。人と触れ合うこともあればただすれ違うことも。いつのまにか年齢と共に少しずつ持っていたものは失い、最後に残るのは旅の初めに目指したものだけでした。物語の最後に込み上げるものがありました。小さな美しい、薄い本の中に人生が詰まっています。私は何を求めて旅を始めたでしょうか。2023/10/04