内容説明
遥かな呼び声にひかれ、促されて人は行く、過ぎ行く―いずこから、いずこへ?人の心の奥底にある、個人的経験を超えた普遍的な無意識の世界を旅する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
5
知らないはずなのに、心はそれを、確かに知っていると訴える。自分のものなのか、それとも、別の誰かのものなのか、それすらもわからない、だが自らの心の内、奥底より湧き上がる記憶。過去と、そして、未来を告げる声に従い、歩む、懐かしき巡礼の旅。魂に刻まれた時間、永く壮大な年月が誘う、穏やかな幸福。自らの内に広がる闇を、闇より吹く風を、それに身を委ねる他のない、孤独な生を、人々の哀しみと危うげな美しさを、冷徹なまでに描き続けていた作者の、巡り会えた一つの答え、そして、魂の救済ともなるべき物語であるように思う。2014/08/09
amanon
2
著者による霊的書物なのだが、正直言って食い足りなさが否めない。かねてから著者の作品には、単なるフランスかぶれと判断されかねないようなある種の危うさを感じていたのだが、本書ではその要素がいつもにもまして強いような気がする。これはしばらくこのての作品を手に取ってこなかったこちら側の事情によるのか?それとも本当にこの作品の質の問題か?にわかに判断しがたい。さしあたりはっきり言えるのは、これまで著者の作品を読むことで感じてきた曰く言い難い吸引力のようなものが本書からは殆ど感じられなかったということ。2014/01/10
antoinette
1
いかにも、なカトリックおばさま文学(褒めてます)。オチがよくわからなかった、なんて感想は、この手の小説にはナンセンスだとわかってはいるけれど。地理や建築の様子が削ぎ落とされた文体で語られるのはいいのだが、フランスに詳しくないためどうしても想像に限界が。ただ、読前には音楽の話が出てくるとは知らず、そこは意外にも嬉しく味わえた。……そして、主人公の「既視感」と危うい想像力に、仄暗い共鳴を覚えてしまう。途中から「ブノワ」が出てくるたびに「ブノワキタwww(゜∀゜)」とならんでもなかったけど、よい読書でした。2014/01/27
satooko
1
20代に大好きだった作家。入信後、寡作になってしまったものの、新作が出れば入手、本作も昨年購入し積んでいた。まさかこんな早く訃報に接するとは。結構ショックだ。81歳なので早すぎることはないのだが、高橋たか子は100歳くらいまで生きているものだと勝手に思い込んでいた。訃報も「高橋和巳の妻」扱いは残念で、無念だ。エッセイかとこれまた勝手に思っていたら本作は小説だった。高橋たか子らしい作品。枯れていないのに嫌らしくなく、潔い。やはり、結構ショックだ。2013/07/30