出版社内容情報
ウクライナに対するロシアの全面的な侵略は、丸三年を超えて、遺憾ながら四年目に入った。
この後書きを書いているこの瞬間も日本から遠く離れた戦場において、激しい戦闘が続いていることに思いを馳せて、ウクライナに残して来た多くの友人知人の顔を思い出す時、定年退官とは言え、戦争が続いている最中にキーウを離任して帰朝せざるを得なかったことに内心忸怩たるものを感じている。
2024年10月中旬に帰国して、実に久し振りに自宅に戻った私を待っていたのは、家内が用意してくれていた真新しい書斎机とその上に置いてあるパソコンだった。それから数か月、家内の励ましと助言を受けながら、過去三年間以上にわたって書き溜めた膨大なメモと自分の記憶を頼りに何とかこの本を纏めることが出来た。
浅学菲才な私を執筆に駆り立てたのは、21世紀において、理不尽なこの侵略戦争に遭遇した一人の外交官として、後世に記録を残すべきであるという義務感、そして、この侵略戦争に巻き込まれて死んだり、負傷したりした兵士や民間人、今なお住み慣れた家・財産を残して国の内外に避難を余儀なくされているウクライナの無辜の人々に対する人間としての抑えがたい惻隠の情である。同時に、書くことが、即、この戦争が一日も早く終わり、公正で、包括的で、永続的な平和がウクライナ、欧州、そして世界に再び戻ってくることへの私の祈りでもある。
この本を手にされるすべての読者の皆様が今一度、21世紀に起きたこの侵略戦争の本質と日本にとっての意味合いに思いを巡らせて頂けるのであれば、筆者にとっては望外の喜びである。(「おわりに」より)
内容説明
圧倒的な火力の差。2日でキーウを陥落すると豪語していたロシアだが、ウクライナは三年も抵抗を続けている。厳しく苦しい状況をどう切り抜けてきたのか。戦時下の同国の戦略を日本の外交官が初の著書で記録する。
目次
第一部 戦争の足音(プロローグ;2022年開戦前夜 ほか)
第二部 戦時下の日本外交とウクライナ(ロシアの侵略の本質と日本の対応;日本のウクライナ支援 ほか)
第三部 戦時下のウクライナ、その強みと弱み(外交官が見たウクライナ軍;腐敗・汚職対策 ほか)
第四部 日本への期待と教訓(復旧、復興、そして戦後の経済発展;戦後の国際秩序の再構築 ほか)
第五部 離任(叙勲;さようなら、ウクライナ)
追―トランプ米政権の誕生と停戦・和平の動き
著者等紹介
松田邦紀[マツダクニノリ]
福井県出身。1982年東京大学教養学部教養学科卒業、外務省入省。1983年‐1986年ロシア語研修(米国・ソ連)、在ソ連日本国大使館などを経て、1996年在アメリカ合衆国日本国大使館一等書記官。1998年在ロシア日本国大使館参事官。2001年外務省大臣官房海外広報課長。2003年日本国際問題研究所主任研究員兼研究調整部長。2004年外務省欧州局ロシア課長。2007年在イスラエル日本国大使館公使。2010年デトロイト総領事。2013年人事院公務員修所副所長。2021年駐ウクライナ特命全権大使を拝命。2024年10月離任。駐ウ大使時代に官民を挙げたウクライナ支援に尽力。反発したロシアから2025年3月3日に入国禁止措置を受けた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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