出版社内容情報
人身御供の祭や伝承は私たちの先祖の生活と心性について何を語るか。世界各地に存在した食人風習とどう関わるか。民俗学や考古学が封印してきた人身御供譚の始源にひそむ暴力=「血なまぐさいもの」を私たちの歴史のリアルとして読み直す。第25回サントリー学芸賞受賞
内容説明
いまや介護の現場で働きながら「介護民俗学」を切り拓きつつある著者は、かつて人身御供譚という「血なまぐさい」話をもつ祭のなかに、食・性・暴力をめぐる民俗的構想力の根源をさぐり、サントリー学芸賞を受賞した。このたび、著者の初志を伝える鮮烈なデビュー作を、新装版として刊行。
目次
序章 「人身御供」はどのように論じ得るか
第1章 「人身御供の祭」という語りと暴力
第2章 祭における「性」と「食」
第3章 人身御供と殺生罪業観
第4章 人形御供と稲作農耕
終章 人柱・人身御供・イケニエ
著者等紹介
六車由実[ムグルマユミ]
1970年、静岡県生まれ。大阪大学大学院文学研究科修了。東北芸術工科大学東北文化研究センター研究員、同大学准教授を経て、現在、静岡県沼津市にあるデイサービス「すまいるほーむ」に管理者として勤務。文学博士。社会福祉士。介護福祉士。民俗思想論専攻、最近は介護民俗学を提唱。2003年、本書『神、人を喰う』でサントリー学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hasegawa noboru
18
<かつて人を殺して神に供えていた>という人身御供(ひとみごく)の語りが祭の起源として伝承されてきたことの意味するものは何かを巡っての民俗学論集。二十年前に刊行された本の新装版であるという。尾張大国霊(おおくにたま)神社の儺追(なおい)祭には<通りすがりの男を無差別に捕らえてきて、災厄を負わせ追放する>という古いスタイルが近世以前まではあったという。すぐ近隣にある神社のことなのに、メディアが報じる観光化した「国府宮のはだか祭」以上のことを知らなかったのはいかにもウカツであった。身近な周辺に厄年になって祭に2023/09/18
らむだ
3
2003年に出版された同名書の新装版。現代に残る人身御供の色を残す祭りや祭祀から、人身御供や人身御供の物語について考える。先人の議論も引きつつ、人身御供論に新たな視点を向ける一冊。2023/10/09
masoho
1
時折見かける、神への生贄として虐待された女性がイケメンの神様と仲良くなる話の違和感から、イケニエは肥やして捧げるもので大事に飼われてるはず、大事でないものを贄にするなんて、信仰心が足りないのでは。などという斜め方向からの好奇心で読んだものの、普通に学術論文でした。人柱と生贄の違いや、神人共食、直会の話等、暴力性は飼い慣らされてるだけであって普通に我々に内臓されてるよね、と思う。もう少し俗に振ってくれたら読み物としては面白かったかも。2025/05/10
dokuni_san
1
日本の祭祀における人身御供についての研究書。構造としては理解できたけど、実際に人身供犠があったのかどうかという点は不明。どっちだったんだろう。仮にあった場合に誰が屠るのかという点が指摘されていたが、そこは大いに議論の余地があるかと。2024/04/28
hiro6636
0
生贄、人柱など人身御供という血生臭い祭りの話が何故現代にまで生き延びたのかへの考察。2025/03/22