内容説明
笑いとは何か?人はなぜ笑うのか?私たちは毎日さまざまな笑いを笑っている。複雑で微妙な意味をこめた笑いは、とても人間的で、理性を逸脱することも多い。でも哲学者たちは昔からずっとこの笑いというものに魅せられてきた。ソクラテスからデカルト、カント、そしてニーチェ、フロイトなどの笑いをめぐる思索をたどりながら、生きること、笑うことの広くて深い意味をさぐる。
目次
序論 三種類の笑い
第1章 喜劇の誕生と古代における笑い
第2章 中世における民衆の笑いの文化
第3章 ルネサンスの笑いの文学
第4章 近代の心身二元論に依拠した笑いの理論と優越の理論
第5章 笑いの共同体の理論
第6章 笑いの放出の理論
第7章 同一性と差異のシステムとしての笑い
第8章 自由と治療の手段としての笑い
著者等紹介
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。東京大学教養学部中退。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tieckP(ティークP)
8
日本きっての哲学解説・翻訳者の中山元が笑いを題材にするというのが僕には時代的に共感できるし、でも本書がほぼ無風なところからは、みんなもっとマジメにしか学問したくないのだとも思う。古代ギリシアのあと、バフチンに乗って中世・ルネサンス文学の解説をし、そこから得意のフーコーやニーチェやフロイト、笑い論で必ず引かれるベルクソンなどに展開。類書でも学べる内容だが、哲学部分は読みやすいし、何よりいびつなほど字数の多いセルバンテス・シェイクスピアの解説部分が趣味のようでとても楽しそう。この気持ちを微笑みの笑いとしたい。2022/04/02
たこ焼き
4
自分の笑いの根源にある動機を自覚することが笑いを通した幸せにつながる。狭い集団で共犯意識が生まれると笑いを抑圧する存在(倫理や大人としての振る舞いやルール)から解放され、些細なことだったり残酷なことでも笑いの連鎖が生まれる。笑いの対象が自分から近い存在だったり共感性が高い事柄だったりすると痛みを感じて笑えなくなる。関係性が低い、痛みを感じない対象に対して笑うことができる。ストレスを感じたときに開放されたくてひきつった笑いをしてしまう。それが相手がバカにされたと誤解につながるリスクがある。2024/12/26
hryk
0
「笑いの哲学史」とあるけれど、半分くらいは文学史の本。でも勉強になる。2021/12/08