内容説明
拒食、過食、嘔吐を主訴とする摂食障害。個人、家族、社会に原因を探るのではなく、「人々はどのように回復しているのか」に焦点をおいて、18人のストーリーを追いかける。初の本格的なナラティブ臨床研究。
目次
序章 回復者の語りを聴くこと
第1章 摂食障害とはどのようにとらえられてきたか
第2章 人々はどのようにして摂食障害になるのか―発症過程の考察
第3章 自己否定はどこからくるのか―維持過程の考察
第4章 一八名の回復者の語り―回復過程の考察
第5章 回復をはばむ物語、回復をもたらす物語―病いの経験への意味づけ
第6章 「分析される人」から「解決する人」へ―回復体験記の考察
終章 過渡的なプロジェクトとしての「回復」論
あとがき―「闘わない社会学」へのプロローグ
著者等紹介
中村英代[ナカムラヒデヨ]
1975年東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了、修士(社会学)。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程満期取得退学、博士(社会科学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)、香港大学客員研究員等を経て、現在、日本学術振興会特別研究員、お茶の水女子大学・東洋大学ほか非常勤講師、専門社会調査士。専攻は社会学(精神医療・臨床・福祉)、社会調査法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りさ
6
原因論にすると、本人、家族、何かが標的になり非難の対象となる。回復のプロセスは、自分やその大切な人たちを責めず、自分の価値を認めていくことにみられるが、それも人によるというのがミソ。もともと自分の価値を過小評価していなくても、摂食障害になりうる。2021/06/27
たらこ
4
「還元論」モデルと「相互作用」モデルと。<回復>に使えるものは何でも使え!しかし、「還元論」モデルは、それに見合った対応もセットにね。<回復>には、今までのパターンを崩す行動や枠組みの変化があることが、本書からも見て取れた。2015/10/26
mit
2
「現代社会は、人がただ『存在する』ことに価値をおく社会ではなく、何かが『できる』ことに大きな価値をおく社会、つまり業績主義社会である。しかし、「できる」ことを通じて自らの価値を高めていこうとする試みは、つねに『できない』自分をへの否定や『できない』他者への否定を伴う。」(192)2020/08/15
こずえ
2
人文的立場から摂食障害について書いた本。具体的な話にもふれており、精神医学や心理学に精通していなくとも摂食障害への理解の入り口になるのでおすすめ。縁遠い話ではないのだ2018/12/21
まいこ
2
回復しつつある人、した人たちによる自己分析や内省。一人一人のストーリー、性格、考え方がよくわかるし、その人の雰囲気までもが想像できそうだった。2013/06/29