内容説明
今ほど“経験”が軽視されている時代はない。メディアの発達が可能にした直接経験なしの生活。われわれはそれで幸せなのか。哲学の初心に戻って「人間の幸せ」の復権を説く、生態学的心理学者で異才の哲学者リードの「遺著」。
目次
序章 経験のための抗弁
第1章 あなたはこれまで経験を経験したことがあるか―哲学は実在世界に直面する
第2章 経験の哲学を探求する
第3章 不確実性の恐怖と経験からの逃走
第4章 現代の職場における経験の衰退
第5章 経験を共有する
第6章 経験と生活への愛
第7章 経験と希望の誕生
終章 経験のための戦い
著者等紹介
リード,エドワード・S.[リード,エドワードS.][Reed,Edward S.]
1954‐1997。生態学的心理学者また異才の哲学者として将来を嘱望されながら、42歳の若さで突然逝去した
菅野盾樹[スゲノタテキ]
東京大学人文科学研究科博士課程単位取得退学、博士(人間科学)。現在、東京工業大学世界文明センター・フェロー、大阪大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
3
生態学的情報による直接経験を処理情報による間接経験(例:メディア経験)が凌駕する現代を批判的に捉える著者は、ギブソンに発した生態心理学をJ・デューイのプラグマティズムに接続し、経験をベースとした「基礎存在論」を提起する。一方、直接経験が間接経験を批判するほど、そのプラグマッティックな可謬性が間接経験を保障してしまうのは、著者が性急に生態心理学を学として主張すぎるからか?それでも、本書の多元的世界におけるコミュニケーションという世界観は、VRの中に「生きられた経験」が生じるようなSF的未来でも可能に思える。2017/09/22
Go Extreme
1
一次的経験の衰退 二次的経験の隆盛 生態学的情報の利用 社会的相互行為の直接性 間接的経験の支配 偽りの現実への避難 現実世界での機能不全 反経験主義的な西洋哲学 経験を流動的な流れとして捉えたジェームズ 日常経験を軽視する知的本質主義 ギブソンの生態学的心理学 外界に直接的に存在する情報=アフォーダンス 感覚器官の能動的探索 視覚情報の役割 経験の共有と共同体の重要性 子供の相互行為能力 経験の平板さ 労働場における経験の衰退 アダム・スミスの分業論の負の側面 経験の民主化 経験を評価し、変容させる能力2025/04/16
takao
1
ふむ2024/10/13
gen
1
経験を軽視する現代社会への批判。リードが生きていていて、今のネット社会を見たら何と言うだろう。2010/06/10
ピリカ・ラザンギ
0
まず初めにこれまでの哲学的思考の批判から始まる。デカルトから始まる形而上学的なことは、自らの思索した概念の中でのみ最も意味を持つ。しかし、我々が見たり聞いたりする「物」はある概念を通してではなく経験的に把握される(これを「哲学的」に説明することは実は難しい)。そして、現代社会における、集合知的な経験が失われたことに話は転る。作者は若くしてなくなったらしいが、今のネット時代の個人間の共有について、なんと言うだろうか?2011/08/21