出版社内容情報
一つ目小僧は、鬼や河童などとともにおなじみの妖怪の一つであり、舌を出した片目片足の古傘のお化けが有名なものだが、かつての神の零落した姿とみられてきた。では、一つ目や片目(両者は厳密にいえば異なるが)の神とは一体どのような神であったのだろうか。すぐに思い浮かぶのが、『古語拾遺』所載の天岩戸神話に登場する作金者(鍛冶の神)の天目一箇神である。金属を作り出す神がなぜ一つ目や片目とされてきたのかという点に関しては、諸説が説かれてきた。それには、金属神の天津麻羅を念頭に置いて物を生み出す男性器(マラ)から天目一箇神を一つ目(片目)とみる加藤玄智説、火神の根源たる天空の太陽神から日神一眼を説く高崎正秀説、金属精錬のタタラ作業で火の色を長年見つめるために片目がつぶれたという若尾五雄や谷川健一の職業病説などがある。鍛冶神や金属製錬を司る神々はしばしば身体的な欠損をもつ者として広く表象されてきており、ギリシアのヘファイトスは跛者であり、その手下のキクロウペは一眼の巨人とされている。またドイツのフォルンドやフィンランドのワイナモイネンも不具者とされており、このように跛や片目などの肉体的な欠損者が鍛冶の仕事に従事している神話伝説は世界的各地に見られる。(本文より)
・「今ではほとんど失われてしまったフォークロア(民俗)が本書では取りあげられている。」川村邦光氏評、2002年1月20日付朝日新聞
内容説明
裸回り、火伏せなどの性的儀礼から、一つ目小僧や異人殺戮、さらに瓢箪、蝶などをめぐる民間伝承のなかに、性と犠牲が民俗社会でもった宇宙論的な意味と現代にまでつながる意味をさぐる。
目次
1 一つ目小僧とタタラ(放浪人と一つ目小僧―共同体とその外部;タタラと錬金術―物質変容の精神史;目の民俗;柳田国男の妖怪論)
2 裸回りと柱の民俗(裸周りの民俗;日本の柱信仰―世界樹としての柱;神話のこころ・性の原風景―裸回り・覗き見の神話学)
3 性の神と家の神(性の神;「火伏せ」の呪物―建築儀礼と性的風習;陸前の竈神信仰―竈神の性格と儀礼を中心に;薩南の火の神祭り;烏枢沙摩明王と厠神;住居のアルケオロジー―「家の神」からみた住まいの原初形態)
4 異人と闇の民俗(祭りと夜―闇のフォークロア;異人歓待・殺戮の伝説;瓢箪の民俗学―虚実のあわいをめぐって)
著者等紹介
飯島吉晴[イイジマヨシハル]
1951年、千葉県生まれ。1974年、東京教育大学文学部卒業。民俗学専攻。現在、天理大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
-
- 和書
- 雲を掴む - 小説集