内容説明
衝撃的な展開と結末で話題を呼んだアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』。観る者をひきつけるその物語、人物たちはどのようにして生まれたのか。アニメ・特撮作品も「メディア文藝」として国文学の流れの一つと考える著者が、「まど☆マギ」の作品世界をつぶさに読み解く。開講時にインターネット上でも大きな話題となった人気講義が待望の書籍化。
目次
1 鹿目まどかの約束―アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の世界(序論、魔法少女の誕生;総論『魔法少女まどか☆マギカ』の概要;各論、少女たちの物語 ほか)
2 暁美ほむらの悪夢―『劇場版“新編”魔法少女まどか☆マギカ―叛逆の物語』の構太(暁美ほむらの神話;暁美ほむらの先輩;暁美ほむらの世界)
3 まど☆マギ教授の幻想―メディア文藝と文学史(本当は若くない「若者文化」;世代文学としてのアニメ・コミック;文学と文藝)
著者等紹介
志水義夫[シミズヨシオ]
1962年4月13日東京都に生まれる。1986年3月東海大学文学部北欧文学科卒業。1991年3月東海大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程後期単位取得退学。学位:博士(文学)。現職:東海大学文学部日本文学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
60
図書館で見つけ借りる。2011年に放映された表題深夜アニメを中心に大学で講義されたものを抄録。メディア文藝として既存の文学以外の創作を論じる試みをしている。個人的にこのアニメはちょうどリアルタイムで鑑賞してネットでの盛り上がりを体験しているため、どういう講義なのかが興味があった。ただまあ、いろいろ考えてしまう。既存の文芸評論とは対象が違うし、似たようなものとしては、映画や演劇の評論なのかと。このアニメの筋や構成、登場人物たちの配置などを解説している。試みの一つとしてこういうのがあるのだと思いつつ読む。2018/03/24
きいち
25
作品の外、時代だとか社会だとかに出ることなく、徹頭徹尾作品の中で語る潔さが、とても心地よい。まどマギにハマっていた自分には特に。◇筋立てや絵面の提示とその読み解きを、テレビシリーズ、劇場版について展開。テレビシリーズを5人の少女それぞれの物語を重層的に組み合わせた構成として読む。終幕に主人公が傍観者の位置から飛び出てくるのは、読み手に参照枠があるからこそ。新編ではハルヒを参照(見たくなった)してセカイ系との関わりを。源氏やニーベルンゲンの指輪との類似の指摘、そうか、この人は古事記が専門の国文学者だものな。2017/11/04
歩月るな
10
前著『ゴジラ』『君の名は』は抜かして最新作に飛びつくミーハーっぷり。個人的には六年前には『ユリイカ』を読んでいるしいつでも参照できる場所に置いてあるのですが、本当言うと純粋には実際にテレビ放送時のテクストしか見ていないので劇場版その他は殆ど見ていないのです。放映版十二話の講義は百ページで収まり、そこから『新編』に話が移ります。「そんな事になってたのか」と言う感想しか出てこない。新編の解説が〈王権獲得〉に当てはめられる型になってる事にはそれ以上に驚く。バルトの構造分析など知らなくても判った気にはなれます。2017/10/01
ミヒャエル・安吾
8
これもバーッと読んだからすぐに読み終わった。なるほど確かに叛逆の物語はビューティフルドリーマーと似てるわな。2019/05/23
🐰
4
本編では複雑に絡み合っている五人の少女の物語を構造的に分解し、それぞれ一本の糸にして整理しています。個人的に一番の発見は、ほむらの願いが自己矛盾していることの指摘です。「まどかとの出会いをやり直したい」という願いが「まどかを救いたい」という願いを打ち消すという構図には気づいていなかったので。確かにまどかを救ったら出会いはやり直せません。そんな自己矛盾に立ち向かうヒロイズムが人を惹きつけてたのかと今更ながら分かりました。無理なことは承知の上で、でも「敢えて」やるという態度は英雄的でありながら儚くもありますね2018/03/26