出版社内容情報
《内容》 序文
新医師臨床研修制度がついに実施されることになった.この制度
では,(1)医師としての人格を涵養すること,(2)プライマリ
・ケアへの理解を深め,患者さんを全人的に診ることができる基本
的な診療能力を修得すること,(3)アルバイトをせずに研修に専
念できる環境を整備すること,の3点を基本的な考え方としている.
これを基に研修プログラム,臨床研修病院の指定基準や研修医の処
遇などが定められている.
臨床研修の到達目標は,各研修病院において作成されることにな
っているが,現実的には十分な準備がされているとはいえない状況
にある.また一定の基準が示されているわけではない.研修すべき
各科における到達目標に関しては,診察法,検査,手技,経験すべ
き病態,疾患などの経験目標を実施可能な範囲に絞り込んで明確化
する必要がある.そして2年間に行わなければならないことを研修医
が理解できるように呈示する必要がある.またその構成,内容につ
いては各研修施設の特色をいかしたプログラムを作成することが求
められている.
この臨床研修の成否はひとえに指導のあり方にあると思われるが,
従来の指導体制では研修医に各診療科において十分な指導が行える
ような状況にあるとは考えられない.また指導医のための手引き書
が準備されているわけでもない.新制度では,各分野での教育指導
はそれぞれの診療科での指導医が行うことになり,その責任は重大
なものとなる.新制度の実施に向けて,多数の指導医を養成するた
めのシステム構築が必要となると同時に,指導のあり方についての
検討も進めることが要求されてくる.こうした指導医の養成は,結
果的に研修病院の診療の質の向上にもつながるものと考えられる.
本書は新しい研修制度の産婦人科指導医の手引き書として上梓さ
れた.指導医になる人のために,産婦人科研修プログラムの到達目
標を明らかにし,経験すべき診療法や検査,手技をわかりやすく示
すように心がけた.従来の成書の記載とは異なり,将来産婦人科を
選択しない研修医も修得しなければならない事項についても解説を
加えた.さらに症状と身体所見,簡単な検査所見に基づいた鑑別診
断,初期治療を的確に行う能力を研修医に身につけてもらうための
解説書でもある.新研修プログラムの指導医や研修医になる方々に
とって,本書が産婦人科の研修を実りあるものとすることの一助に
なれば幸いである.
2004年2月
慶應義塾大学医学部産婦人科教授 吉村泰典
《目次》
執筆者一覧
序文
第1章 オリエンテーション 吉村泰典
A 産婦人科の特徴および研修のポイント
B 研修スケジュール
C 外来・病棟での注意
D 当直での注意
E 産婦人科領域において注意する点
F 医療事故への対応
第2章 経験目標(経験すべき診察法・検査・手技)
A 基本的な身体診察法
1 問診および病歴の記載ができる……………………三橋直樹
2 腹部の診察,記載ができる…………………………三橋直樹
3 泌尿生殖器の診察,記載ができる…………………三橋直樹
4 新生児の診察,記載ができる………………………高橋尚人
B 基本的な臨床検査
1 一般的尿検査………………………………………久保田俊郎
2 血液生化学的検査…………………………………久保田俊郎
3 婦人科内分泌検査…………………………………久保田俊郎
4 感染症検査………………………………森川 肇/山崎峰夫
5 妊娠の診断………………………………森川 肇/山崎峰夫
6 不妊検査…………………………………藤江道子/星 和彦
7 細胞診・病理組織検査……………長谷川清志/宇田川康博
8 内視鏡検査…………………………………………可世木久幸
9 超音波検査………………………………市塚清健/岡井 崇
10 放射線学的検査………………………………………岩下光利
C 基本的手技………………………………………………宮越 敬
1 注射法
2 採血法(静脈血,動脈血)
3 穿刺法
4 導尿法を実施できる
5 局所麻酔法を実施できる
6 創部消毒とガーゼ交換を実施できる
7 簡単な切開・排膿をする
D 薬物療法
1 生殖医学………………………………………………苛原 稔
2 周産期医学……………………………………………杉本充弘
3 婦人科腫瘍学…………………………………………落合和徳
E 医療記録…………………………………………………高井 泰
1 診療録の記載法
2 処方箋,指示箋の記載法
3 診断書・証明書の記載法
4 CPCレポートの記載法
5 紹介状や返信の記載法
F その他……………………………………………………久慈直昭
1 産婦人科にかかわる倫理的問題の理解
2 母体保護法関連法規の理解
3 家族計画の理解
第3章 経験目標(症状と疾患の理解)
A 頻度の高い症状…………………………………………石原 理
1 全身倦怠感
2 浮腫
3 リンパ節腫脹
4 腹痛
5 腰痛
6 血尿
7 排尿障害
B 緊急を要する症状・病態…………………竹田善治/中林正雄
1 急性腹症
2 ショック
3 流・早産および満期産
C 疾患・病態(理解が必要な基本的知識を含む)
1 骨盤内の解剖の理解…………………………………玉舎輝彦
2 視床下部・下垂体・卵巣系の内分泌調節系の理解
……………………………………………………………峯岸 敬
3 妊娠の検査・診断……………………………………水上尚典
4 正常妊婦の外来管理…………………………………水上尚典
5 分娩機転………………………………………………水上尚典
6 正常産褥の管理………………………………………水上尚典
7 異常妊娠,異常分娩……………………杉村 基/金山尚裕
8 正常新生児の管理……………………………………高橋尚人
9 流・早産の管理………………………佐々木 泰/齋藤 滋
10 内科的合併症…………………………佐々木 泰/齋藤 滋
11 産科出血に対する応急処置の理解
……………………………………………佐々木 泰/齋藤 滋
D 女性生殖器およびその関連疾患
1 性の分化異常…………………………………………百枝幹雄
2 月経異常………………………………………………宮川勇生
3 不妊症…………………………………………………齊藤英和
4 骨盤内腫瘍(婦人科良性腫瘍,悪性腫瘍)………塩沢丹里
5 中高年女性の健康管理………………………………太田博明
6 感染症…………………………………………………野口昌良
索引
コラム
1 肉体的に大変だった研修医時代………………………高橋尚人
2 研修医指導のポイント…………………………………高橋尚人
3 研修医時代のおもいで…………………………………岩下光利
4 私のインターン時代……………………………………宮川勇生
5 徒弟制度のいいところ…………………………………百枝幹雄
6 オーベンの先生方………………………………………三橋直樹
7 不妊症治療の進歩………………………………………齊藤英和
8 経腟USGがなかったころ ……………………………玉舎輝彦
内容説明
本書は新しい研修制度の産婦人科指導医の手引き書として上梓された。指導医になる人のために、産婦人科研修プログラムの到達目標を明らかにし、経験すべき診療法や検査、手技をわかりやすく示すように心がけた。従来の成書の記載とは異なり、将来産婦人科を選択しない研修医も修得しなければならない事項についても解説を加えた。さらに症状と身体所見、簡単な検査所見に基づいた鑑別診断、初期治療を的確に行う能力を研修医に身につけてもらうための解説書でもある。
目次
第1章 オリエンテーション(産婦人科の特徴および研修のポイント;研修スケジュール;外来・病棟での注意;当直での注意;産婦人科領域において注意する点;医療事故への対応)
第2章 経験目標(経験すべき診察法・検査・手技)(基本的な身体診察法;基本的な臨床検査;基本的手技;薬物療法;医療記録;その他)
第3章 経験目標(症状と疾患の理解)(頻度の高い症状;緊急を要する症状・病態;疾患・病態(理解が必要な基本的知識を含む)
女性生殖器およびその関連疾患)
著者等紹介
吉村〓典[ヨシムラヤスノリ]
慶応義塾大学医学部産婦人科教授
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