ABCトランスポーター - 生体防御のABC遺伝子から疾患まで

ABCトランスポーター - 生体防御のABC遺伝子から疾患まで

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  • サイズ B5判/ページ数 82p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784787810434
  • NDC分類 491.42
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》  細胞は形質膜や小胞体、ミトコンドリアなどの細胞内小器官膜を介してイオンや栄養素の輸送ならびに老廃物や毒素の排出を行うことにより細胞機能を維持している。これらの物質輸送は、チャネル、トランスポーターと呼ばれる膜輸送タンパク質により選択的に行われている。ABCタンパク質はアミノ酸配列が類似したATP結合領域を共通に有する膜タンパク質ファミリーである。ABCタンパク質はATP結合領域が種々の膜タンパク質に挿入されたりサブユニットの1つとしてあたかもカセットのように使用されていることからATP-binding cassette(ABC)タンパク質と名づけられた。現在までバクテリアからヒトにいたるまでの400以上のABCタンパク質が同定されている。たとえば枯草菌では4,100のタンパク質をコードする遺伝子のうち少なくとも218個がABCタンパク質に関連した遺伝子であることが示されている。最近ヒトゲノムのラフドラフトが発表されたがヒトについてもすでに60以上のABCタンパク質をコードする遺伝子の存在が明らかとなっている。ABCタンパク質の多くはATPを加水分解して得られたエネルギーを利用してさまざまなびっしつを輸送あるいは排出するトランスポーターとしての機能を有することが知られていたが、最近ではABCタンパク質それ自身がイオンチャネルとして機能ことやチャネルのレギュレーター(あるいはレセプター)として機能することも明らかにされ、その機能多様性は一層の拡がりを見せている。ABCタンパク質の異常は特定の物質や毒素を細胞内に蓄積し、細胞機能が障害される。その結果、種々の病的状態を引き起こす。すなわちABCタンパク質は生体防御にきわめて重要な役割を果たしている。このようにABCタンパク質は広く生体機能に関わり、しかもさまざまな疾患と密接に関係があるにもかかわらず体系的にまとめた著者はほとんどみられなかった。
 本書はABCタンパク質の研究で第一線で活躍されている先生方に基礎から病態にいたるまでup dateの情報を大変分かりやすく執筆していただいた。本書がABCタンパク質の理解に役立ち、多くの読者がこの領域に興味を抱いていただければ幸いである。大変貴重な時間を費やして執筆された諸氏に心から感謝するとともに、きわめてタイムリーにこのトピックを企画された診断と治療社小池さつき氏にお礼を申し上げたい。" 糖尿病、動脈硬化、抗癌剤耐性、さまざまな疾患や生体防御での重要性が明らかとなりつつあるABCタンパク質、その研究の歴史から最新の知見までわかりやすく解説。    

《目次》
1.ABCタンパク質とは
 1-1.ABCタンパク質とは
 2-1.ABCタンパク質が与えた2つの問い
 1-3.細胞は袋である
 1-4.膜タンパク質が細胞内部を特殊な環境に保っている
 1-5.ABCタンパク質は膜タンパク質のうちもっとも大きなファミリーを形成している
 1-6.トランスポーター、チャネル、レセプター(レギュレーター)
 1-7.トランスポーター型ABCタンパク質
 1-8.チャネル型ABCタンパク質
 1-9.レセプター(レギュレーター)型ABCタンパク質
2.ABCタンパク質の発見
 2-1.ABCタンパク質の命名
 2-2.ABCタンパク質の構造的特徴
3.MDR1と抗がん剤耐性
 3-1.多剤耐性がん細胞とP糖タンパク質
 3-2.MDR1遺伝子の単離
 3-3.MDR1:抗がん剤排出ポンプ
 3-4.MDR2:リン脂質フリッパーゼ
 3-5.MDR1の基質の特徴
 3-6.MDR1の基質認識部位
 3-7.MDR1の基質輸送機構
 3-8.MDR1の生理機能―脂溶性生体異物排出ポンプ
 3-9.MDR1と腫瘍の抗がん剤耐性
4.CFTRと嚢胞性線維症
 4-1.嚢胞性線維症とCFTRの発見
 4-2.イオンチャネルとしてのCFTR
 4-3.CFTR CL-チャネルの調節機構
 4-4.CFTRによるイオンチャネルの調節
5.SURと血糖調節
 5-1.経口糖尿病薬スルホニル尿素薬の歴史
 5-2.インスリン分泌とスルホニル尿素薬
 5-3.スルホニル尿素受容体(SUR)の構造
 5-4.内向き整流性K+チャネルの単離
 5-5.KATPチャネルの構造解明
 5-6.KATPチャネルと血糖調節
 5-7.KATPチャネルの分子多様性
 5-8.SURによるKATPチャネルの調節メカニズム
 5-9.KATPチャネルによる虚血の防御作用
6.アニオン排出輸送ポンプと薬物の体内動態:MRPとBSEP
 6-1.多剤耐性関連タンパク質(multidrug resistanse associated protein)
 6-2.MRP1の生理機能
 6-3.MRP1による抗がん剤輸送機構
 6-4.肝臓におけるMRPファミリーの役割
 6-5.MRPファミリーの存在
 6-6.小腸におけるMRPファミリーの役割
 6-7.血液脳関門/血液脳脊髄関門におけるMRPファミリーの役割
 6-8.MRPファミリーによる輸送の分子機構
 6-9.胆汁酸輸送と肝内胆汁うっ滞症
7.その他のABCタンパク質と疾病
 7-1.ペルオキシソームABCタンパク質
 7-2.TAPと抗原処理機構
 7-3.ABCAサブファミリー
8.ABCタンパク質機能の普遍性と特異性
 8-1.ABCタンパク質の機能の多様性
 8-2.ABCタンパク質の多機能性
 8-3.MDR1の輸送/ATP加水分解共役モデル
 8-4.CFTR:2スイッチモデル
 8-5.SUR1:濃度センサースイッチ
 8-6.ABCタンパク質の秘密
9.ABCタンパク質異常と治療
 9-1.ABCタンパク質と生体防御
 9-2.抗がん剤耐性の克服
 9-3.嚢胞性線維症の治療
 9-4.ABCタンパク質を標的とした治療薬