内容説明
詩人尹東柱の生地としても知られる満州東部の北間島(現中国延辺朝鮮族自治州)。現代韓国を代表する作家キム・ヨンスが、満州国が建国された1930年代の北間島を舞台に、愛と革命に引き裂かれ、国家・民族・イデオロギーに翻弄された若者たちの不条理な生と死を描いた長篇作。
著者等紹介
キムヨンス[キムヨンス]
金衍洙。1970年、慶尚北道金泉生まれ。成均館大学英文科卒業。1993年、詩人としてデビュー。翌年、長編小説『仮面を指差して歩く』を発表し、本格的に創作活動を始める。文学、思想、歴史、社会科学など、広範な読書体験に裏打ちされた文体で多くの読者を魅了し、韓国現代文学の第一人者と評されている。東仁文学賞、大山文学賞、黄順元文学賞、李箱文学賞など数多くの文学賞を受賞。エッセイスト、翻訳者としても活動している
橋本智保[ハシモトチホ]
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
19
満州事変後の南部の朝鮮人自治区を舞台に、民族独立と共産主義国家誕生を目指し革命運動を起こしたにもかかわらず、内部崩壊していく若き革命家が描かれている。革命には大きな理想を掲げて運動が起きるが、暴力を手段に使うため、思想面の相違や組織内の権力闘争、人間関係のもつれから血生臭い内部闘争が起きてしまう様子に、革命の虚しさが漂っている。本書を読むまで、モデルとなった民生団事件の存在を知らなかった。韓国文学が次々と翻訳されているが、私たちが知らない歴史を知ったことは有意義でものであった。2024/03/31
ori
8
1930年代満州の北間島を舞台に民生団事件を題材にしていて、独立を願う朝鮮人はそれぞれの思惑により中国共産党か日本関東軍に入り乱れ複雑すぎ正直混乱した…とにかく何も知らないので注釈なしにはさっぱりわからなかっただろう。注釈も詳細なので2冊の本を読んだ気分。自然の描写が美しく、こんなに美しく静かな所で吐き気のする容赦ない暴力が起きるのが逆にリアルすぎる。歴史や戦争に客観性などなく、どちらかの主観でしか説明できないみたいなことも現在進行形の戦争の状況を見れば本当にそうだなと思ってしまう。2024/08/06
Sachiko
3
日本が満州を支配しだす前の現在の中国の朝鮮自治区の話。登場人物の関係も当時の情勢もあまりに複雑で混とんとしており、途中からよくわからなくなってしまった。最後に研究者の解説がついており、実際、そのような社会情勢だったと知ったが、日本人が深くかかわっているこの地の歴史を、日本人は全く知らないのだと思った。2020/05/06
林芳
2
知らない歴史。ましてや解説で「ひと言で説明するのは難しい」と書かれてあるように理解できたのかどうか。多分読んでいても半分も内容が理解できなかったように思われる。ただ文学青年が複雑な思想の波に奔流する苦しみは伝わってきた。もしかしたら、作者は自分がこの時代この場所で行きていたらどうだっただろうと想像しながら描いたのかもしれないと思った。2024/11/05
きょん
0
これまでに読んだ中で最も複雑な「境界」案件。背景を勉強して、いつか再読したい。2021/11/23