内容説明
台湾文学翻訳家の俳句とエッセイ。
目次
句集 風景と自由(いつも心に自画自賛;季節たち(二〇〇九~二〇一二)
空と女と音楽と
もっと匂いをもっと動きを
帰る場所がふたつあり)
拾遺 俳句にならなかった風景(俳句にならなかった風景;二〇一八年)
散文 台湾を思い出す方法(外国人のいる風景1 餃子;外国人のいる風景2 上様;あいまいな国境の歴史(抄)
台湾を思い出す方法
杉田久女と台湾)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
qoop
7
台湾文学翻訳家として一部に名を馳せつつも早逝した著者の、俳句と台湾に関するエッセイをまとめた本書。解説によると著者は俳句も翻訳も〈ただそこにあるものを別の言葉に写し換える作業〉と云ったそう。だとすると補遺「俳句にならなかった風景」は溢れ出た何かだろうか。余計に切ない。/ボクシンググローブを干せ五月晴れ/雑巾の乾く速度が冬となり/手袋を取るのが嫌で忘れた句/マンゴーは出始め二色赤と青/里祭落馬で人が死んだこと/あと何を食えば眠れる秋の鬱/敬老の日ばあちゃんより先に死なぬ法/花落ちて憎しみはなお宙ぶらりん2021/10/24
チェアー
7
翻訳と俳句をつくることは似ているのかもしれない。 制約のあるなかで、自分のことばをつむぐ。 作者はよく空を見ていた。空の色を見ていた。 じっと字を見つめつづけた後、疲れを癒やすために空を見上げたのだろう。 その光景を想像する。美しい。 「13・67」の翻訳者として天野さんを知り、すごい翻訳だと感動した。もうこの感動は味わえない。残念だ。 2020/12/07
belle
6
翻訳家の天野健太郎さんが、俳句に親しんでいたことはこの本が出版されるまで知らなかった。天野さんが遺してくれた風景の中で、花を見たり流れる音を聞く。季語が主張しすぎず十七音に自然に溶け込んでいる印象。「オリオンを南に仰ぐ坂下りて」。先日ちょうどこんなふうにゆるい坂を下って、空を見上げた。花屋の店先では黄色が春を呼ぶ。「フリージア遅れて届く香りかな」。寒さに凝り固まった体がゆるんだ。この句文集を読みながらいつか見た風景を思い出す。自由に。2021/01/18
Smiltg
0
2018年に47歳で亡くなった翻訳家の俳句とエッセイをまとめたもの。「俳句にならなかった風景」の中の俳句がとてもよい。クスッとできる一瞬を切り取っているのに、そこには不思議な趣がある句がいくつもあった。2020/12/23
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- 和書
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