出版社内容情報
壬申の乱で大海皇子(天武天皇)勝利に貢献したことで日本書紀にも登場する美濃の伝統的古代豪族ムゲツ氏は、その後中央政界に進出せず、律令体制下の地方行政に専念した。文献史料ではわからなかった古代地方行政の実態を、郡庁跡、郡正倉院などの考古学的発掘から明らかにする。
内容説明
『古事記』『日本書紀』に登場する美濃の伝統的地方豪族ムゲツ氏は、壬申の乱で大海人皇子の勝利に貢献したが、その後は中央政界には進出せず、地方行政に専念する。郡庁院や正倉院が建ち並ぶ郡衙遺跡から、地方豪族が律令官人へ変容する過程とその活動の実態を追う。
目次
第1章 壬申の乱とムゲツ氏(壬申の乱;美濃の豪族)
第2章 氏寺「弥勒寺」(弥勒寺跡の調査;「弥勒寺」の伽藍)
第3章 美濃国武義郡衙(整然と配置された郡庁院の殿舎;建ち並ぶ倉―正倉院;郡衛以前の建物群)
第4章 水の祭祀(弥勒寺西遺跡の発見;美濃ではじめて出土した古代木簡;ムゲツ氏と水の祭祀;「弥勒寺」とのかかわり)
第5章 地方豪族から律令官人へ(浮かびあがる「弥勒寺」建立前後の歴史;律令制を見える形に;弥勒寺の法灯)
著者等紹介
田中弘志[タナカヒロシ]
1962年生まれ。1990年岡山大学大学院文学研究科史学専攻(考古学)修了。岐阜県高等学校教諭を経て、1996年関市教育委員会文化課。現在、関市文化財保護センター課長補佐(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うしうし
2
美濃国武義郡衙である弥勒寺遺跡群(岐阜県関市)に関する書籍。法起寺式伽藍配置で川原寺式瓦(凸面布目平瓦も)をもつ弥勒寺と正倉院や整然とした建物配置をとる郡庁院が特徴。飛鳥・白鳳時代には弥勒寺(当時の呼称は「大寺」)を造営したムゲツ(身毛)氏の居館、奈良・平安時代には郡衙となる。2017/12/13
rbyawa
1
f165、美濃の武義郡(むぎ)という地域にあった弥勒寺を従えた行政機関に近い遺跡の本なのですが、どうもこの武義郡というところから特別な地位だったようで、のちの美濃国の国府にも酷似した構造を持っているらしく、さらにその構造は陸奥の多賀柵(のちの城、防衛拠点)や大宰府に近いものだとか…最前線だよなぁ? ただあれ、国衙だとわりと建物の大きさがばらついてるので確かに雰囲気は違うよね、行政機能があると建物の大きさ変わってくるよね。周囲からも武義郡が微妙に特別扱いだったことも察せられる、研究が進展するのが楽しみです。2015/06/29
scarecrowinjp
0
岐阜県関市の弥勒寺遺跡群。律令制下の郡衙遺跡。長良川の屈曲部に位置し、東と南が川で背後が山という天然の要害。古代大和王権と結びついた美濃国の豪族の拠点であったと推定される。地方豪族が律令官人へと成長していく過程が建物跡から窺える。現在は史跡公園として整備されている。2022/03/11
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