内容説明
黒潮あらう伊豆南東海岸に、神津島黒曜石を大量に陸揚げした遺跡がある。太平洋上の神津島から六〇キロメートル、黒潮を渡った黒曜石は、この見高段間集落を拠点として南関東一円に流通した。黒曜石と縄文土器の産地分析の成果をもとに、海洋交易者の光芒を追う。
目次
第1章 水平線に黒曜石を求めて(荒波のなかの神津島;神集う島の黒曜石)
第2章 神津島黒曜石の陸揚げ地(見高段間遺跡の発見;学校に守られた遺跡 ほか)
第3章 舞い降りた黒曜石分析装置(蛍光X線の可能性に魅せられる;息の合った共同研究)
第4章 「海の黒曜石」のゆくえ(「黒曜石のふるさと」信州;「海の黒曜石」のゆくえ ほか)
第5章 遙かな神津島(神津島への航海;「海の黒曜石」から「山の黒曜石」へ)
著者等紹介
池谷信之[イケヤノブユキ]
1959年静岡県の伊豆韮山に生まれる。明治大学大学院文学研究科修士課程修了。沼津市文化財センター主任学芸員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
14
来年の早春、河津桜とこの見高段間遺跡を見にいくことを決意した。それにしても怖るべしは、黒潮を横切って60kmの神津島まで黒曜石を採りに行った縄文人の知恵と勇気。著者が自宅に自費で(!)X線蛍光分析装置を導入するのが 2003 年。こういった分析に基づく産地同定と流通経路の研究が可能になったのは、わりと最近のことなんだなあ。。こないだブラタモリでやってた信州の黒曜石鉱山(?)の巻もよまなくては。2021/10/31
禿童子
13
蛍光エックス線分析という技法によって石器の産地を精密に判定することが可能になった。貯金をはたいて数百万円もする機器を購入した池谷さんの熱い研究者魂に感服する。船の難所である石廊崎に近い伊豆南東部の見高段間遺跡から大量に出土した黒曜石のルーツは沖合60kmの神津島と恩馳島(おんばせじま)である。現地踏査での資料収集とシーカヤックによる縄文時代の丸木舟航海のシミュレーションも興味深い。神津島産の「海の黒曜石」と信州産の「山の黒曜石」の流通経路と出土分布を解明する明治大学黒曜石プロジェクトの成果に期待したい。2017/10/07
三谷銀屋
1
縄文時代の黒曜石流通の中心地となった伊豆の見高段間遺跡。出土した黒曜石製石器を化学的な手法で産地推定した結果、縄文人達が海を渡って神津島まで黒曜石を採取しに行っていたことが分かった。丸木舟で黒潮を横切り命の危険を冒しつつも黒曜石を求めて航海した縄文人達の姿を思うと大変感動的だけど、それとともに、筆者の研究にかける情熱や考古学に対する熱意も伝わってくるのが良い。神津島近隣の黒曜石は島外に持ち出してはいけないとされていたようで、古代から現代に至るまでこの地の黒曜石が神聖視されてきたという事実も興味深かった。2024/07/06
-
- 和書
- 現代社会を読み解く知