内容説明
「世界最大の国なき民」―クルド民族。現在、クルド人の土地=クルディスタンはトルコ、イラン、イラク、シリアなどの国境線で分断され、それぞれの国では同化政策や差別に直面している。クルディスタンを訪ね続ける写真家が綴った、トルコに生きるクルドの人々の文化、生活の素顔、背負い続ける苦難の現実、そして出会いと旅の記憶―。
目次
プロローグ はじめてのクルド人のまち―ドウバヤズット
1 行き先は「クルド」(行き着いたまち―メルシン;ネブロスの炎―ディヤルバクル ほか)
2 時をかけて(クルド人であること、トルコ国民であること―イスタンブール;素顔のクルディスタン―ドウバヤズット ほか)
3 彼らの居場所(国境線の向こうへ―ハッサケ;水に沈む遺跡と生き残った村―バトマン周辺 ほか)
4 私のなかのクルディスタン(みちのり―バスの車中;皆既日食―ジズレ ほか)
著者等紹介
松浦範子[マツウラノリコ]
1964年、千葉県生まれ。1986年、武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科卒業。高校教師、会社員などを経て、現在、フォトグラファー。1996年より、トルコ、シリア、イランのクルディスタンを繰り返し訪問。雑誌「世界」「日本カメラ」「未来」「インパクション」などでも、クルド人、クルディスタンの写真を発表している
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感想・レビュー
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sagatak
3
湾岸戦争で注目されクルド人の存在を知ったが、その実情については小島剛一氏の著書で初めて知った。その後この本を見つけ、女性の目なら少し違うだろうかとさほど期待せず読んだところ... 全く違わなかった。改めて、近年に至るまでの、いやおそらく現在のトルコにおけるクルド人の立場の困難さを知らされた。内容も素晴らしいが、この本を書くに至った著者の心の変化も読み取ることができてよい。結論などないのだろうが、著者の感じるもどかしさを私も感じることができた。読んでよかった。2012/06/20
Maumim
2
地理の授業で習った、国を持たないクルド人の人々のルポ。 池澤夏樹の書評で紹介されていて手にとって見たら、おもしろくて一気読み。 しかし、図書館では閉架になってるんだよなあ。 関心の赴くままに、村に入り込んでいくのだけれど、最後に振り返って、果たしてこのやり方でよかったのか、自分はよそ者に過ぎないのではないかと逡巡する心の動きは、わかる気がする。 「心の原点は故郷にあるんだ。だから僕たちはずっとここで暮らしていく。」 小さな村で、クルド人としての運命を静かに受け入れてこうつぶやく青年の言葉が、強く響く。2016/07/12
gassy
2
松浦さんの体当たりの記事に感動。彼らの生活、悔しさ、矛盾、いろんな感情が伝わってきた。知ることが出来てよかった。2010/05/12
ぼーじょみ
1
クルディスタンの旅を続ける著者に語られ、映し出されるクルドの人々の素顔の生活と、そこに見え隠れする分断、差別、同化、虐殺の歴史の影。生きるということそれ自体が、あまりに歴史的な問題としてある。それがクルド人としての生なのだ。国民国家やマイノリティーの問題に関心を寄せる人には是非とも読んで欲しい一冊。歴史に正面から向き合って来た人ほど、この本の随所にデジャヴを感じるはずだ。一見遠く離れたクルドの問題は、私たち自身の社会をも照射するのだ。2015/05/29
salty year
0
世界最大の祖国を持たない民族、クルド人。国境線で隔てられたクルド人たちは各国でマイノリティとして迫害、抑圧され生活してきました。そんな境遇にある彼らが持つもてなしの心意気や、その笑顔には驚きを感じました。ひとつの大陸に多数の文化や民族が生活することの難しさを知ることの出来る本です。地図には載っていなくともクルド人のまち、クルディスタンは存在しているのだと思います。その事を知り、理解する必要が私たちにもあるはずです。2015/11/27