内容説明
1914年から4年間、西太平洋メラネシアのトロブリアンド諸島の調査から生まれた文化人類学史上不朽の名著。本書において著者は機能的方法を具体的に適用し、社会規範から逸脱が発生する過程とその反動力の形成を実証し、その理論は法社会学に大きな影響を与えた。
目次
第1部 原始法と秩序(慣習への自動的服従と現実の問題;メラネシアの経済状態および原始共産主義の理論;経済的義務の拘束力 ほか)
第2部 原始的犯罪とその処罰(法の侵害と秩序の回復;法的勢力としての魔術と自殺;法体系の牴触 ほか)
付録 原始法の特性―Hogbin,Law and Order in polynesia,1934への序文(機能および進化の研究としての現代人類学;旧派人類学の法理論;犯罪者にたいする全共同社会の反動としての法 ほか)
付 文化論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
近代以降の法治国家における法という考えはギリシャ・ローマを起源とする判例法や制定法のような文字化された法を主に指している。それに対して本書は、文字のない、国家のない社会における「未開法」という考えを示した。ニューギニア・トロブリアンド諸島を調査した著者は、集団の慣行に従う社会にもそれとは別に規範からの逸脱として法があることを、外婚制から逸脱した者への制裁事例から検討し、逸脱の基準が社会の基盤を揺るがす点にあると捉える。本書は、当時素朴と見なされた未開社会が複雑な関係をなしつつ保たれている点を前景化する。2024/02/25
抹茶ケーキ
0
マリノフスキー以前の「原始法学」を全然知らないので何に対して反論しているのかあまりわからなかった。未開人といっても法に盲従しているわけではなく、合理的・機能的に従っているという主張かなと思った。機能主義が前面に出ていること、宗教や文化についての根本的な考察がなされているという点で、新版になるにあたって訳出されたらしい「文化論」の方が面白かった。2015/10/20