内容説明
リスクの予測と制御は幻想でしかない。リスク処理はさらにリスクを増殖させていく。ルーマンの社会システム理論をさらに展開し、リスクを観察する。
目次
1 パラドクス(リスク回避と時間処理―近代社会における時間のパラドクス;リスクとコンピュータ―制御の欠如の制御の問題)
2 不確実なるものの確実さ(良き欠陥を通じての自己認知―現代社会における組織の試み;危険の予防とリスク処理―環境法におけるリスク管理)
3 免疫反応ないし無害化(リスクと危険との間のシュンペーター・ダイナミクス―システム理論による大きな物語の素描;リスク処理社会―隠蔽と破棄の自己運動)
4 脱‐合理的位相(リスクと宗教―近代・前近代における危険と責任に関する考察;リスク、責任、運命―その関連性とポストモダン)
著者等紹介
土方透[ヒジカタトオル]
理論社会学・法社会学・社会システム理論。1956年生まれ、社会学博士。ハノーファー哲学研究所客員教授(93‐95)、ヴュルツブルク大学哲学部客員教授(2000‐01)、現在、聖学院大学教授、Soziale Systeme:Zeitschrift f¨ur soziologische Theorie編集委員
ナセヒ,アルミン[ナセヒ,アルミン][Nassehi,Armin]
理論社会学・知識社会学・文化社会学。1960年生まれ。ミュンスター大学私講師を経て、現在、ミュンヘン大学教授、同社会学研究所所長
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感想・レビュー
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ピラックマ
2
リスク処理はさらにリスクを増殖させていく、全てを制御できるという思い込み、傲岸。マネジメント地獄にも似て。2013/07/06
Mealla0v0
1
ルーマンのリスク社会学を基本的視座として共有するドイツ人社会学者と日本人編者のアンソロジー。リスクの「制御」という観点に立つと、人類はこれまで危険をリスクにしてきた。自らの決定によってそれを制御しようとしてきた。この意味で、リスクは常に決断を迫ってくる自己増殖性の性質を持っている。であれば、リスク社会は「リスク処理社会」だと言える。これがパラドクスを生むのは、処理そのものがリスクを生産するからだ。そうして、決定者/被影響者、リスク/危険という枠組みは内破される。システムにとってリスク処理は必然となるのだ。2017/10/13
koillmatic
0
リスク社会論の論文集。 ルーマンやベックの王道理論を主に用い、リスクを中心概念として機能する再帰的近代社会のさまざまな様態が記述・分析される。 理論的検討だけでなく、個別の事例も充実していてなかなか面白い本なのだが、いかんせん和訳が酷い。2011/12/13