内容説明
エミル少年は、お母さんと二人だけで都会の団地に住んでいる。ある日、エミルは、ひとりで食事にいったレストランで、人間の姿をしたペリカンを発見する。やがて、エミルとペリカンは友だちになり、いっしょに人間の美しさ、悲しさを学んでゆく…。
目次
石だたみ
ガラスとダイヤモンド
海辺の砂
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまはるか
8
フィンランドの作家と日本人の挿絵による物語。ポイントとなる個所に出来事と雰囲気を表わす十数枚のスケッチが挿入されていて、文字から絵に目を移して隅々まで眺める絵本読みを楽しんだ。人間になろうとして人間社会に紛れ込んだペリカンと母と二人暮らしのエミル少年との交遊を通じて人間と動物の根本的な違いが示される。存在とは何か。そんな哲学的な問いが提示されている。ヨースタイン・コルデルの「ソフィーの世界」に共通する空気感は北欧の風土によるものか。先ず動物園で、次に世界のどこかで自然界に棲むペリカンに会ってみたくなった。2022/01/25
イリエ
3
一種の「ユートピア作品」として、ヒトであることを優しく諭してくれた。2009/11/04
たま
2
ま、物によりけりですがね。しかし、大体のところ、一番大切なことは、ほかのことは忘れてもあとに残ることだね。ペリカンは人に憧れ、美しいものを愛するけれど、夢破れて家族のもとへ帰ることにする。2016/02/22
きゅー
2
児童文学ということもあり、レーナ・クルーン独特の、非現実と現実が皮肉に入り乱れ、乾いた悪意が彩りを添える作品群とは雰囲気が異なっている。 が、人語をしゃべるペリカンという媒介を用いて、人間社会を外側から眺める彼女の視線は、やはり厳しい。むしろ幼い子がこの本を読んだら人間に対して不信を抱くのではないだろうか。あるいは、エミルという子どもに感情移入し、普段自分が感じている、世間への”納得できなさ”を再確認するのかもしれない。異邦人としてのペリカンに、私たちは何を見るのだろうか。2012/02/25
kino
1
読みやすいお話。だけど哲学的で根を張りそう。2010/10/30