内容説明
宇宙的視野と巨大な時間の流れの中で、生と死の意味を問うワイルダー戯曲の代表作。演劇観の全体を伝える序文を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
23
アメリカのニューハンプシャー州の小さな町。普通の人たちの日々の暮らし、とりとめのない会話。読み手それぞれの「わが町」を重ね合わせることができる。こうした第一幕の「日常生活」に始まり、ジョージとエミリーの結婚式の一日を描く第ニ幕の「恋愛と結婚」、お産で亡くなったエミリーが、過去に死んだ町の住民たちと墓場で会話をする第三幕の「死」で終わる。 亡くなったエミリーが、再び生の世界に、自身の12歳の誕生日の日に一日だけ戻る場面の、ほとばしるような想いに心が動かされた。⇒2021/02/28
りえこ
14
もう、何度も読んでいるけれど、やはり名作。号泣してしまいます。人生がきちんと描かれている。本当、普通の当たり前の1日でさえ、こんなに愛に満ちて素晴らしい。普段なかなか感じなかったりするけれど、もっと感謝しなくちゃと思います。2015/06/28
スミス市松
9
「人は死ぬ」ということはこの一年で改めて多くの人が思い知った事実だと思う。翻って自分がこの断崖のような〈いま・ここ〉に立っていると気づいたとき、恐ろしいほどの不安に駆られたことはないだろうか。正直なところ、私は明日への「予感」というものをほとんど失いかける。たとえば私がこのあと五秒後に一体何をしでかすのか、そんなことすら皆目見当がつかなくなってしまうのだ。2012/05/23
もぽ
2
現在ではよくあるメタ的な演出を、当時初めて取り入れたワイルダーの戯曲。描かれているのは、どこにでもある一つの町の、どこにでもいる人々の生活。それを視点を変え、構成の巧みさで観客に提示する。ページの1/3を占める丁寧な訳註のおかげで、より深く理解できた。2021/03/09
かわけい
2
133ページ 人間てのはそんなもんだ。無知という雲の中をほっつき歩いて、行く先々で相手かまわず人の感情を踏みつけにしてやがる。まるで千年も万年も生きられますってな調子で、やたらに時間を浪費しちゃ、次から次へと自分勝手な欲望に振り回されてるエゴイストばっかり。お前が帰りたがっていた幸せな人生なんてそれだぞ。エゴと無知のでっちあげだ。:* : 私たちはこの世に生まれ、暮らして死んでゆく。そんな単純であるべき生活を、自分たちで難しく、生きにくくしているのではないだろうか。欲望を捨てるというのは難しいですよね。2015/04/09