出版社内容情報
大正期から昭和期における泉鏡花のテクストを丁寧に読み解き、作品が内包する魅力や可能性を浮かび上がらせる。そして、鏡花を軸にしながら、岡本綺堂、国枝史郎、水木しげるなどの多様なテクストやサブカルチャーに目を配り、近代日本文学における〈物語〉のダイナミックな可能性と、そこでの〈怪異〉のありようをも照らし出す。
希代の妖怪作家・鏡花と現代の怪異怪談文化を接続して、近現代日本の怪奇幻想の系譜を紡ぎ出す文学研究の臨界点。
※本書の編集委員(以下、敬称略・五十音順)
一柳廣孝、小林敦、近藤瑞木、鈴木彩、副田賢二、谷口基、富永真樹、東雅夫
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始まりの書となれ
この論集は、?始まり?に過ぎない。論者はこの?先?こそを見据えていたのだろうと思う。
彼の見据えていたその?先?を知る術は既にない。
その?先?を書き継ぐのは本書を繙く者である。いや、後続たる者は本書を読んでおかねばならないだろう。
夭折を惜しむ。そして志を継ぐ者の登場を強く望む。
京極夏彦
はじめに 東 雅夫
第1部 鏡花と妖怪
解題 鈴木 彩
第1章 鏡花が描く妖怪像
第2章 恋愛劇と「大魔神」――「飛剣幻なり」の妖怪像
第3章 顔を奪うむじな――「古狢」の妖怪像
コラム1 「語られ/騙られ」る怪異と向き合うために 飯倉義之
第4章 怨まない幽霊たち――後期鏡花小説の幽霊像
コラム2 器怪が躍る昭和モダニズム──関東大震災後の妖怪文芸 乾 英治郎
第2部 水木しげると妖怪文化
解題 小林 敦
第5章 マンガ化される「高野聖」――『水木しげるの泉鏡花伝』を読む
第6章 「妖怪ブーム」前夜の水木しげる
第7章 一九七〇年代の「妖怪革命」――水木しげる『妖怪なんでも入門』
コラム3 怪奇・妖怪・ホラー――「怪」なるものの消費と大衆文化 伊藤龍平
第8章 地方を旅する鬼太郎――怪異が生じる場所を求めて
第3部 幻想・怪異・文学
解題 谷口 基
第9章 自動車に乗る鼠――泉鏡花「半島一奇抄」が描き出す怪異
コラム4 走りゆく怪、流れつく怪――車窓がつなぐ陸と海 今井秀和
第10章 岡本綺堂の怪談
第11章 国枝史郎「神州纐纈城」試論
コラム5 「伝奇小説」の系譜と「異端文学」ブーム 谷口 基
第4部 鏡花を読む
解題 富永真樹
第12章 「由縁の女」の小説手法
第13章 結末を持たない小説の読み方――「龍胆と撫子」論
コラム6 「読み」をめぐる転換と煽動――一九二〇年代の小説とプロット 副田賢二
第14章 大正末期の鏡花文学――「眉かくしの霊」を中心に
第15章 複製される「像」――「夫人利生記」論
コラム7 鏡花テクストの視覚性――リアルの侵食 三品理絵
第16章 小説家の眼差しの彼方に――視線のドラマとしての「山海評判記」
コラム8 鏡花文学の女性表象――真なるものを視る=書くことの(不)可能性 金子亜由美
清水潤著述一覧
おわりに 一柳廣孝
清水 潤[シミズ ジュン]
著・文・その他
怪異怪談研究会[カイイカイダンケンキュウカイ]
編集
内容説明
大正期から昭和期における泉鏡花のテクストを丁寧に読み解き、希代の妖怪作家・鏡花と現代の怪異怪談文化をも接続して、近現代日本の怪奇幻想の系譜を紡ぎ出す文学研究の臨界点。
目次
第1部 鏡花と妖怪(鏡花が描く妖怪像;恋愛劇と「大魔神」―「飛剣幻なり」の妖怪像 ほか)
第2部 水木しげると妖怪文化(マンガ化される「高野聖」―『水木しげるの泉鏡花伝』を読む;「妖怪ブーム」前夜の水木しげる ほか)
第3部 幻想・怪異・文学(自動車に乗る鼠―泉鏡花「半島一奇抄」が描き出す怪異;岡本綺堂の怪談 ほか)
第4部 鏡花を読む(「由縁の女」の小説手法;結末を持たない小説の読み方―「龍胆と撫子」論 ほか)
著者等紹介
清水潤[シミズジュン]
1970年、岐阜県生まれ。東京都立大学大学院博士課程満期取得退学。博士(文学)。首都大学東京都市教養学部助教などを務める。専攻は日本近現代文学。特に泉鏡花研究に力を注いだ。2017年3月13日に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
zatugei