内容説明
LGBT、ジェンダー、移民、多文化共生、排外主義、視覚障害者、貧困、生きづらさ、当事者研究、インターセクショナリティ、教育実践、メディア―様々な分野の多様性との対話を通して、多様性/ダイバーシティが肯定的に奨励される問題点を批判的に検証し、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る。
目次
第1章 多様性との対話
第2章 ダイバーシティ推進とLGBT/SOGIのゆくえ―市場化される社会運動
第3章 移民・多様性・民主主義―誰による、誰にとっての多文化共生か
第4章 生活保護言説における「日本人」と「外国人」を架橋する
第5章 「生きづらさからの当事者研究会」の事例にみる排除の多様性と連帯の可能性
第6章 「同じ女性」ではないことの希望―フェミニズムとインターセクショナリティ
第7章 共生を学び捨てる―多様性の実践に向けて
第8章 アート/ミュージアムが開く多様性への意識
著者等紹介
岩渕功一[イワブチコウイチ]
関西学院大学社会学部教授。専攻はメディア・文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
69
LGBTQ、移民、生活保護、生きづらさの当事者、インターセクショナリティ(交差性)など多様性/ダイバーシティをめぐる論集。ダイバーシティ&インクルージョンの推進に伴う連帯と排除の問題を取り上げている。マジョリティ性(つまり特権性)を多くもつ者が、自らが優遇されていることに気づかないかぎり、真の意味での変革は望めないという。ダイバーシティ・マネジメントとダイバーシティ・マーケティングの2つの動きが面白い。産業界がダイバーシティにコミットし、経済優先のお題目を担ぎ上げていないかよく見ておこう。2024/10/13
テツ
20
ダイバーシティだの多様性だのと言った言葉は毎日のように耳にするけれど、それに纏わる諸々についていったいどれだけ理解しているのか。更に言うのなら本当にそれを心の底から望む人ってどの程度存在しているのか。基本的にみんな区別(差別)を好むのだという事実を踏まえながら、それを現実的な力として振りかざしてはならないという根本的なルールをどうにかして共有しなければ上辺だけでいくら多様性を尊重しましょうなんて口にしても無駄だと思うけどな。違いはある、違いは気になる。それでも迫害はいけない。それだけなんじゃないかなあ。2021/11/24
K(日和)
10
P.20より「本書の目的は、多様な差異を互いに認めあって平等に包含し、誰もが生きやすい社会へと日本を開いていくことに向けて、どのような視野、連帯、実践、学びが求められるのかを考察することである。」 現在日本各所で取組みが進みつつある(ように表面上見える)ダイバーシティ推進によって捨象されてしまう属性はないか。見せかけのダイバーシティ推進に鳴っていやしないか。それを各観点から考え批判することで、現に存在している差異を社会として包含し、差別構造を解消するためにどのように動くべきかを考察している。2021/12/28
awe
7
「多様性」「ダイバーシティ・インクルージョン」という耳障りの良いお題目には常々違和感を感じていたが、そうした違和感を丁寧に掬い上げ学術的に議論した論文集が本書で、とても勉強になった。1章では、BLMMが多様性の称揚やD &Iといったスローガンに換骨奪胎されてしまう懸念について論じられている。要は、これらのスローガンが叫ばれることで、既存の差別構造はなかったこと或いは解決済みの問題となり、そうした「平等」な状態の中で互いに互いを尊重し合いながら生きていこうという「幻想」が作り出されるのである。これらは調和的2021/05/03
jackbdc
6
バズワード化しているダイバーシティ推進に付随する多様な視点や論点の整理に役立った。前提条件として人間は差別や排除を行いがちな生き物である事を理解した上で、自身の感情や行動を素直に気付いて制御の方法を学ぶ事が不可欠だと思った。国籍、性別、性的趣向、障害の有無、経済状況等の項目には無自覚になりがち。そこに見えない「特権」が潜んでいるという視点を持つことは何らかの意識付けが無いと難しいと改めて考えた。また、個人的には雇用形態による賃金格差も差別(奴隷)だと捉えているのだが世間的には認知されていないのだろうか。2021/09/11