出版社内容情報
フェミニズム研究はこれまで、男性優位の社会が女性を抑圧していることを明らかにし、批判してきた。一方で、男性も「男らしさ」という価値観に縛られてきたが、そうした男性をめぐる規範が成り立つなかで、芸術や文学は「男」をどのように描いてきたのか。
この問題意識から、欧米や中国の映画や文学、芸術、演劇などの物語や表現を、男性表象という視点から読み替える。それを通じて、無意識的・意識的に「男性性」に規定されて揺らぐ作家・登場人物や多様な「男らしさ」を、時代や社会に即して析出する。
「#Me too」など女性への抑圧に対する反対運動が話題になるなか、社会のマジョリティであるために、透明人間のように「そこにいる」のに語られない、男性性を次々と明らかにしていく表象分析である。
内容説明
文学や芸術は、「男」をどのように描き出してきたのか―。欧米や中国の映画や文学、芸術、演劇などを男性表象という視点から読み替え、無意識的に/意識的に男性性に規定されて揺らぐ作家や登場人物の多様な“男らしさ”を、彼らが生きた時代と社会に即して析出する。社会のマジョリティと見なされているからこそ、透明人間のように「そこにいる」のに語られることがない男性性を解明する表象分析。
目次
序文 マスキュリニティ、二十世紀、表象
第1章 表現主義のマチズモとアウトサイダー性
第2章 新しい男の誕生?―ダダにおける「新しい人間」のマスキュリニティ
第3章 洪深のアメリカ留学体験―自伝における人種差別・恋愛、そして演じること
第4章 男らしくない西部劇小説『シェーン』―冷戦期アメリカの核/家族
第5章 「人間らしさ」への道、「男らしさ」への道―ラルフ・エリソン『見えない人間』
第6章 母、マジョリティ、減退する性―ロマン・ガリと男性性
第7章 飛ばなかった王子―マシュー・ボーン版『白鳥の湖』にみる男性性と現代社会
第8章 現代美術にみる狩猟と男性性―おとぎ話文化研究の視点から
著者等紹介
熊谷謙介[クマガイケンスケ]
神奈川大学外国語学部教授。専攻はフランス文学・文化、表象文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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