出版社内容情報
移民、難民、テロ、犯罪、ヘイトスピーチ――国内外の具体的事例と現場を「越境」と「想像力」という視点から読み解き、そこに潜む問題性を浮き彫りにする。社会的分断を乗り越えるために、私たちの想像力をバージョンアップするアクチュアルな成果。
世界を再想像する テッサ・モーリス=スズキ
解題 他者と出会いなおし、世界を想像しなおす 塩原良和
序章 越境的想像力に向けて 塩原良和
1 共感と想像力
2 社会学的想像力と歴史的想像力
3 ナショナルな想像力の限界
4 社会階層と想像力の制約
5 リアリティの分断とスティグマ化
6 想像力を「越境」させる
7 本書の構成
第1章 越境者・媒介者・コスモポリタンをめぐるリアル・ユートピア――長野・宮城・バンクーバーにおける移住者たちのトランスナショナリズム 西原和久
1 日本農村にみられる越境者――交流の諸相と媒介者の発見
2 震災被災地・宮城の越境者たち――外国人被災者と媒介者
3 出移民と媒介者たち――オイジンとカナダ移民を中心に
4 多文化社会の再検討と媒介者の変容――国家主義を超えて
第2章 民間外交と移民――戦間期の日米経済人交流を事例として 辛島理人
1 移民のはじまりとしての開国
2 日本の民間経済外交
3 アメリカの排日運動
4 渋沢栄一の対米民間外交
5 パナマ運河の開通とサンフランシスコ万博
6 日米関係委員会
7 排日移民法
8 その後
第3章 移民史と海事史を越境する――二十世紀初頭のアメリカ諸港における日本海員の「脱船」を事例として 栢木清吾
1 渡米手段としての脱船
2 日本の出国管理を潜り抜ける海員の移動
3 脱船の防止策と失敗
第4章 「避難民」としての越境――神戸の白系ロシア人の事例から 中西雄二
1 白系ロシア人を取り巻く情勢と諸制度
2 神戸の白系ロシア人社会の形成
3 就業状況と日本社会との関わり
4 戦後の白系ロシア人社会
第5章 コロニアル・クリミナリティの系譜学――韓国・朝鮮人への蔑称から探る「継続する植民地主義」 ジョエル・マシューズ[鈴木弥香子訳]
1 日本で作られた「朝鮮学」
2 日本宗主国への「転移」
3 日本の統計学の発展と「不逞鮮人」言説
4 ポストコロニアルな空間に残存する植民地主義
第6章 反知性主義、未決性、互酬性から希望へ――ヘイトスピーチでの「分断」から考える 川端浩平
1 ヘイトスピーチの現場から見えてくる奇妙な三角関係
2 ヘイトスピーチと「分断」
3 ストリートから消え去った者たちの現在
4 反知性主義に向き合うことから見えてくる未決性と希望
第7章 反税運動と移民排斥運動にみる福祉ショービニズム――デンマークにおける「租税同意」の歴史的経緯から考える 倉地真太郎
1 「納税者の反乱」から「移民排斥運動」への文脈
2 地方財政と多様なニーズ
第8章 風刺と宗教――ポスト世俗化時代のデモクラシー 清水知子
1 揺れる欧州、回帰する神々
2 世俗主義の系譜とその破綻――問いなおされる公共圏
3 変貌する戦争とテロリズム
4 狂信者とは何者か――寛容と暴力の行方
5 文化の翻訳と赦し
第9章 多文化共生概念が「禁止」するもの――ブラジル人集住地区のリアリティ 山本直子
1 X地区とブラジル人
2 エスニック・コミュニティの役割の変化
3 多文化共生の名のもとで
第10章 「根のあるコスモポリタニズム」へ――グローバル化時代の新たな試練と希望 鈴木弥香子
1 なぜコスモポリタニズムは再び注目されたのか
2 「根のないコスモポリタニズム」?
3 コスモポリタニズムが抱える歴史的・文化的問題性
4 「根のあるコスモポリタニズム」
第11章 阪神・淡路大震災を「想像し続ける」歴史実践のために――「一九九五年生まれ」の空間性と帰属感覚 稲津秀樹
1 阪神・淡路大震災の空間と神戸・長田の「土壌」
2 軌跡の可視化と不可視化の間――復興まちづくりのなかで
3 「一・一七のつどい」を行き交う軌跡の渦へ
4 「一九九五年生まれ」の空間性と帰属感覚――まとめにかえて
あとがき――もうひとつのまえがき 稲津秀樹
塩原 良和[シオバラ ヨシカズ]
1973年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部教授。専攻は社会学・社会変動論、オーストラリア社会研究。著書に『変革する多文化主義へ』(法政大学出版局)、『共に生きる』(弘文堂)、翻訳書にガッサン・ハージ『希望の分配メカニズム』(御茶の水書房)など。
稲津 秀樹[イナヅ ヒデキ]
1984年、兵庫県生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。専攻は社会学、カルチュラル・スタディーズ。共著に『カルチュラル・スタディーズで読み解くアジア』(せりか書房)、『フィールドに入る』(古今書院)、『排除と差別の社会学[新版]』(有斐閣)など。
内容説明
貧困や格差の拡大、テロ/人種差別といった剥き出しの暴力と排外主義の台頭、他者へのバッシング―。社会的な分断を乗り越えるための私たちの想像力をバージョンアップするアクチュアルな成果。
目次
越境的想像力に向けて
越境者・媒介者・コスモポリタンをめぐるリアル・ユートピア―長野・宮城・バンクーバーにおける移住者たちのトランスナショナリズム
民間外交と移民―戦間期の日米経済人交流を事例として
移民史と海事史を越境する―二十世紀初頭のアメリカ諸港における日本海員の「脱船」を事例として
「避難民」としての越境―神戸の白系ロシア人の事例から
コロニアル・クリミナリティの系譜学―韓国・朝鮮人への蔑称から探る「継続する植民地主義」
反知性主義、未決性、互酬性から希望へ―ヘイトスピーチでの「分断」から考える
反税運動と移民排斥運動にみる福祉ショービニズム―デンマークにおける「租税同意」の歴史的経緯から考える
風刺と宗教―ポスト世俗化時代のデモクラシー
多文化共生概念が「禁止」するもの―ブラジル人集住地区のリアリティ
「根のあるコスモポリタニズム」へ―グローバル化時代の新たな試練と希望
阪神・淡路大震災を「想像し続ける」歴史実践のために―「一九九五年生まれ」の空間性と帰属感覚
著者等紹介
塩原良和[シオバラヨシカズ]
1973年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学法学部教授。専攻は社会学・社会変動論、オーストラリア社会研究
稲津秀樹[イナズヒデキ]
1984年、兵庫県生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。専攻は社会学、カルチュラル・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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