内容説明
こころと脳のはたらきとは、どんな関係にあるのでしょうか?また、脳のどこで、どんな感情が生みだされるのでしょう?ヒトに特有の抽象的世界をつくりだすことばは、どこで生みだされるのでしょうか?それらについてわかっていること、さらに脳機能を調べる手段としての画像法、神経疾患・精神疾患と脳とのかかわりも解説します。
目次
第1章 ヒトの脳の構造と機能(脳のはたらきとしての「こころ」;臓器としての脳 ほか)
第2章 脳を見る(脳に対する関心―脳画像法の原理 ほか)
第3章 言語思考のしくみ(言語と脳;人間の言語とその進化 ほか)
第4章 情動と感情(情と理;基本的な一次感情 ほか)
第5章 脳の病気(脳の病気の分類;神経疾患の脳科学 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もちもちかめ
14
一次感情、即物的物理環境に縛られている好悪だけではなく、人間は二次感情、社会的象徴的世界に無限に広がる環境を発達させてきた。その時間的空間的無限さから、ルールを作って縛りを作ることになった。実践的な脳科学の先生でも、いざ哲学的領域に入るとこの程度なのか、と感慨深い。理研の教授でもそんなもんなんか…。そら、市井の人間なんかこんなもんだな、と自分を慰めてみた。皮肉ではなく、事実として了解した。他人に期待せんとこ、の戒め。2017/04/07
紅花
11
脳科学という言葉を聞くようになって、何年ぐらいたつのだろう。文系と理系が合体して、新しい分野が生まれつつある。まだまだ、これからの分野、今後の期待が↑偏見や差別を受けてきた心の病が、科学的な根拠を得られ、治療も進み、社会からの不利益から解放される日は近いのかも。2018/12/09
kenitirokikuti
10
「神経編」に続いて「こころ編」。おそらくnerveとmindだろう。しかし、約半分はnerve編つづき。MRIの話や精神疾患の話である。もう半分は、言語機能と情動について。初期の脳神経科学は生成文法を支持していた。現在は前適応説をとる。言語能力に必要な機能が個別に適応され、それらが揃って偶然言語が誕生したというもの。19世紀後半に『種の起源』が刊行されたとき、言語起源論も盛んになったが、当時の知見では検証不能な事柄が多すぎたため、パリ・ロンドン言語学会が言語起源論を扱わないことにした。21世紀になって再開2018/01/28
YT
8
神経編に続き読む。 脳の複雑さ、心の説明し難さがくっきりとわかる。 後半半分は哲学的な議論も絡み合ってきて人文系寄りの人にとっては面白く読めると思う。 言語の部分や病理の部分は既知の部分もあったし分かりやすかったけど、情動のところは知らないことも多く非常に勉強になった。 情動の哲学って分析系とかではメジャーな内容なのだろうか?掘り下げてみたい。 内容は神経編とともに基本のキなのだと思うのでハンドブックとして定期的に参照することになるだろう。2024/11/19
こんどー
5
ある方が 「脳科学について学ぶ時の最初の一冊に」と言及されていたので読んでみました。現時点(2013年)の研究で分かっていること、分かっていないことが誠実に切り分けされていると感じます。(全部は理解できてないですが...) 個人的には特に「4章 情動と感情」が面白く、一般的に「原初的で、理性に制御されるべきもの」と思われがちな「感情(情動)」は、実際には過去の経験での感情の記憶によって理性による推論プロセスをショートカットするなど、人々の意思決定をかなり有効に補佐している などの話があり、面白かったです。2021/01/09