内容説明
「恐ろしい伝染病」という誤ったイメージとともに、療養所に隔離されることを余儀なくされたハンセン病者。彼らは戦後社会のなかでどのようにして実存を模索し、療養所の内外の他者との関係性を編み上げてきたのか。多磨全生園の入所者の声を丹念に聞き取り、さまざまな日常の営みからそのリアリティーに迫る。
目次
序章 ハンセン病療養所で生きるという経験をめぐって
第1章 隔離を構成する機制と実践―戦前期の全生園の日常から
第2章 「社会復帰」という実践―ハンセン病療養所退所者の経験から
第3章 自己の確認をめぐる攻防―ハンセン病療養所にとどまった人々の「戦後」経験
第4章 療養所の内外へと広がる社会的世界―「ふるさとの森」作りの取り組みから
第5章 「終わり」と向き合う―全生園入所者による歴史記述の諸実践から
終章 「想い」の地形学―ハンセン病問題の過去・現在・未来
著者等紹介
坂田勝彦[サカタカツヒコ]
1978年、千葉県生まれ。筑波大学人文社会科学研究科社会学主専攻修了。博士(社会学)。東日本国際大学福祉環境学部准教授。専攻は福祉社会学、歴史社会学、社会問題論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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erie
2
網羅的というよりはかなりトピック的であった。名前や私財の没収とか、暴力をともった統制、書くものへの規制、自らを撲滅することが使命であると書かないといけないなど、著しく歪められた暮らしが浮き彫りになる。一方で様々な技能を持った患者が様々な役割を担って共同体を維持するさまは興味深くも感じた。2023/01/16
まつゆう
0
構造からの&上からの&静態的な把握に対してハンセン病者の病いの経験や制度の中で逞しくしたたかに生きるという姿を対置するのは決して珍しい手段ではないが、きちんとやればこれだけ素晴らしい本になるのだし、文体や注目するポイントに人柄が出ているようで安心できる。2016/11/14