内容説明
終戦後の混乱を憂え、国の行末に危惧を抱いた青年たちが、かねてから師と慕う保田与重郎のもとに集って言論結社“まさき会祖国社”を興したのが昭和二十四年、同九月には同社を発行所として同人誌「祖国」が創刊された。以後昭和三十年二月号の終刊まで、同誌は保田の主要な著作発表の舞台となる。執筆者名のない「祖国正論」は同二十五年新年号から連載が始まって、時々の休載をはさみながら昭和二十九年四月号まで続き、一貫して“まさき会祖国社”社説の役割を担った。折から公職追放中だった保田は、署名こそ控えたが、当時の時局や社会・人情に関して真率な反戦後的言論を展開しながら「祖国正論」を書き継ぎ、生き残った文人としての責めを果すとともに矜恃を示した。本書1は二十六年十二月号までの同稿から選んで一冊とした。
目次
昭和二十五年((「祖国」新年号)絶対平和の根拠と日本人の心構/宇野浩二が示した小説作者の立派さ
(「祖国」二月号)戦争介入の危険を警める為めの細心さ/真の無抵抗主義とは何か/陛下の知らしゝ昭和二十四年
(「祖国」三月号)産児制限論者に与ふ/「椿君の場合」/文学者と学者は貧乏でなければならない ほか)
昭和二十六年((「祖国」一月号)昭和二十六年を迎へる(アジアの希望)/自給自足体制を緊急に考へよ/歴史に回顧せよ/修身科と社会科は一つでない/国歌君が代/民衆の文芸観と道徳回復の兆
(「祖国」二月号)祖国の悲運を哭す/竹槍と「必敗の信念」/最も恥づべき人間と間違つた人々/浅薄な文芸理解者/「年の始め」/日本軍隊の強剛なりし一条件
(「祖国」三月号)戦争に対する恐怖心/胡適の反駁/トーマス・マンの平和論/河上徹太郎の孤独と時間 ほか)
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双海(ふたみ)