内容説明
「近代という命目で現代を害している思想の諸傾向を清掃排除する」という志向から書名を定めた、とはしがきに記された本書は、昭和十六年十二月も押し詰まって刊行された評論集である。十九篇の諸作は昭和十五年の夏から十六年の半ばにかけての開戦前夜に書かれ、それぞれに時代の影をしのばせる文章が少なくない。収載作に「一貫する趣旨は、文化の伝統とその再建について論じ、かたがた時務を述べて名分を正そうとしたもの」と著者が述べているように、遽しさを加える時代の中で、危機と革新を意識しつつ国の文化と歴史をどう考えようとしたかを示す集といっていい。因みに、翌十七年初秋、雑誌「文学界」の主催で「近代の超克」座談会が開かれているが、“超克”と“終焉”の立場の差は明らかで、保田はその座談会に殆ど関心を示さなかった。
目次
日本文化の独創性
我国に於ける浪曼主義の概観
神道と文学
天平の精神
「ノロ高地」を読みて
時代と詩精神
国語の普及運動について
芭蕉俳句私見
文化の転換期
文化運動について
文化の創建と学徒
新しい倫理
自然主義文化感覚の否定のために
歴史と地理
文化の健全性について
都会人の道徳
風景観について日本文学史上に現れた国民精神の隆起点
日本的世界観としての国学の再建