出版社内容情報
《内容》 私企業が国民の遺伝情報を管理するアイスランドの現在、個人個人の体質にあわせたテーラーメード医療の可能性、遺伝情報と生命保険との関係、遺伝子診断の実状など、ポストゲノム解析時代のさまざまな問題を、各分野を代表する内外のゲノム・エキスパートとの対話を通して、“市民の目”からあぶり出す。
《目次》
プロローグ:ヒトゲノム解析研究はシューズを履いてスタートラインに立つ
1. ゲノム情報から新しい薬をつくる
-カーリー・ステファンソン博士
(アイスランド、デコード・ジェネティクス社代表取締役社長)
なぜアイスランド?
アイスランド国民健康医療データベース法
遺伝的等質性は新薬開発に有利
家系図と遺伝子の「創始者効果」
ライセンス獲得のその他の決め手
インフォームド・コンセントと個人情報保護は他人事ではない
遺伝情報は人間の生命を救うために活用される知識
薬の効き目は個人の遺伝的性質によって決まる
テーラーメード医療
スニップス(SNPs)
リンケージ(連関)研究とアソシエーション(関連性)研究
遺伝的に等質な集団が遺伝学には重要なポイント
日本の人口集団は遺伝学研究にうってつけ
ゲノム研究に投資を
ゲノム研究の一番大事な応用は創薬
DNAチップとマイクロアレイ
プロテオーム(プロテオミクス)
ゲノム創薬は人種的境界を越えて、世界的人口集団に適用できる
社会の透明性という原則
以前も今後もインフォームド・コンセントは絶対必要
限られた範囲の同意と適用範囲の広い同意
個人には何の関心ももっていない
結婚するとき、インフォームド・コンセントが必要なのか?
2. 人は遺伝子のみにて創られているのか?
-アイナール・アルナソン博士
(アイスランド、非政府組織・マンバーント代表)
アイスランド国民健康医療データベース法案をめぐって活躍する非政府組織
政府から完全に独立した生命倫理委員会を
生命倫理委員会には一般市民の代表も加えられるべき
氏名の一方向的暗号化と匿名化
アイスランドのインフォームド・コンセントのなりたち
ワシントン大学のインフォームド・コンセント
参加したくないという条項
データベースの利用権はあらゆる科学者に開放されるべき
人は遺伝子のみにて創られていない
誰の遺伝子も異常?
ベートーベンを中絶するのか
ロンドンのロイズ保険者協会は各国の遺伝子データに関心をもっているかもしれない
ヒト遺伝子の変異多型は、八五%が個人に、七・五%は民族間、残りの七・五%は人種間に起因
ゲノムプロジェクトは国民の利益が第一、ビジネスは二の次であるべき
3. 保険会社は遺伝子産業の主役になるか?
-フランツ・ジョゼフ・ワール氏
(欧州保険委員会本部長)
遺伝子診断結果は保険審査に利用されるか
スウェーデンの場合
フランスの場合
保険会社が遺伝子スクリーニングを行う?
競合は保険料を適正に保つ
保険業界が遺伝子テストの結果にアクセスしなかったら?
市民陪審
現時点では保険加入時に遺伝子テストを求められることは、まずない
良い遺伝子をもった人たちと悪い遺伝子をもった人たちに分けてはならない
4. 医療のニューウェーブ
-ウォルター・ボドマー卿
(オックスフォード大学ハートフォード校学長)
花々と星々と―多面体としてのヒトゲノム研究
各人に適した副作用の少ない薬
既存薬のリバイバルや性能アップに使えるテーラーメード医療
薬剤耐性菌とDNAテクノロジー
ゲノム多様性プロジェクト
特許戦争
遺伝子テストは予防にベストの手段か
遺伝子テストの標準モデル-大腸がんと強直性脊椎炎
乳がんの場合
健康な赤ちゃんがほしい―出生前検査と着床前テスト
出生前の選択は人類の進化を促す消極的優生学か?
着床前テストおよびスクリーニングは低コストですむ
診断結果が陽性と出たときには誰に知らせるべきか?
告知する人の適格性
英国における個人情報保護策
英国のデータ保護条例
遺伝子テストは生命保険と関係させるべきではない
政府は保健医療サービスに十分な財源を
家族性がん診療所の設立
保険の掛け金は遺伝的素質に左右されてはならない
科学者は一般市民に、どのようなことをしているか知らせる義務がある
科学分野の助成金申請時に普通の言葉で書かれた一文も提出
生命科学と社会科学の結婚
部分的クローンには賛成
5. 遺伝子診断ってどんなもの?
-福嶋義光医学博士
(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部長)
四通りある遺伝子検査
意味のある遺伝子検査と意味のない遺伝子検査
生活習慣病の遺伝子検査は時期尚早
はじめに遺伝子検査ありきではない
キーポイントは遺伝病の原因遺伝子変異の有無
一〇〇%のリスクファクターはまれなケース
チーム医療
二段構えの診療
生命倫理がからむ診療場面
ニーズが増え続ける発症前診断
最低四回の遺伝カウンセリング
臨床遺伝学認定医制度
遺伝子診療はプラスαの医療?
誰しもすねに傷もつ身?
障害もその人の個性という考え方
エピローグ:〇・一%のヒト一塩基変異多型(ポリモルフィズム)と九九・九%の全員共有ヒト遺伝子と
内容説明
本書は、ヒトゲノム解析問題について、日本から外国を客観的にみると共に、外国と日本の違いを明確に示し、さらに一般市民の視点まで加えた本である。
目次
プロローグ ヒトゲノム解析研究はシューズを履いてスタートラインに立つ
1章 ゲノム情報から新しい薬をつくる―カーリー・ステファソン博士(アイスランド、デコード・ジェネティクス社代表取締役社長)
2章 人は遺伝子のみにて創られているのか?―アイナール・アルナソン博士(アイスランド、非政府組織・マンバーント代表)
3章 保険会社は遺伝子産業の主役になるか?―フランツ・ジョゼフ・ワール氏(欧州保険委員会本部長)
4章 医療のニューウェーブ―ウォルター・ボドマー卿(オックスフォード大学ハートフォード校学長)
5章 遺伝子診断ってどんなもの?―福嶋義光医学博士(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部長)
著者等紹介
佐伯洋子[サエキヨウコ]
本名、今栄子。1975年東京都立大学人文学部卒業。石油化学プラント領域の翻訳に従事した後、1984年(株)アイ・シー・オーを設立。製薬業界での薬事申請関連総合ドキュメンテーションなどの活動を展開し、現在同社代表取締役。21世紀の地球にすむ私たちにとって、どのような科学技術が必要不可欠であり、ヒトの生存にいかに貢献するかを文科系の人間の視点から考えていくことをライフワークと定めている
武部啓[タケベヒラク]
1957年東京大学理学部生物学科(植物課程)卒業。京都大学医学部、医学研究科教授を1998年に定年退官後、現在は近畿大学教授。ライフワークのDNA修復の研究に加えて、1985年ごろから生命倫理、とくにヒトゲノム解析に伴う倫理的課題に深い関心を寄せている
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