内容説明
文化は絶えず“異なるもの”の影響を受け、変容を続けている。日々の暮らしの中で、それはせめぎあい、渦をまき、決して固定されることがない。そのダイナミズムは同時に、個々人のアイデンティティがゆらぐ契機ともなる。―移民となり、異邦で暮らすこと。それは、その渦中に身を投じ、新たなアイデンティティの創造に挑むことに他ならない。著者は自らの挑戦を、澄明な社会論へと昇華する。個人とコミュニティとの新たな関係を見つめ、犀利な考察をもとに、多文化主義と寛容による新国家像を導き出す。
目次
第1章 移民とカナダ人を隔てる距離
第2章 血統主義を超えて―マルチカルチュラリズムの国家観
第3章 多文化と国家的統一性
第4章 カナダに移民排斥の動きが見られない理由
第5章 九・一一以降のマルチカルチャー社会
第6章 移民たちの就職戦線
第7章 移民たちを襲う鬱病
第8章 エスニック・コミュニティの役割
第9章 統計では計りきれない移民社会のメリット
第10章 カナダ国籍を選択する理由―移民から市民へ
著者等紹介
篠原ちえみ[シノハラチエミ]
京都で雑誌のライター、高校講師(英語)を経た後、1999年に結婚を機にカナダへ移住。以後、カナダの日本語新聞『ニュー・カナディアン』(現在休刊)、『日系の声』などに寄稿し、ライター、フリーランスの翻訳者として働く。2000年9月よりトロント大学(University of Toronto)にて政治学を専攻
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感想・レビュー
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ののまる
7
カナダのマルチカルチュラリズム政策。日本の多文化共生など、言葉だけがツルツルと滑り続けてるものな…まず根底に人権意識がそもそも無いから。2025/03/05
Yukiko
0
カナダのマルチカルチュアリズムを移民の立場から書いたエッセー。著者は、結婚でカナダに渡ったので、日本の単一民族国家観をあまり疑うことのないまま移民したらしい。マルチカルチュアリズムに触れた驚きが、素朴だ。 ただ、政治学を専攻した人なので、内容は堅実。 寛容で、多様性を良しとする多文化主義、民主主義の根付いたカナダ。これまで、どこか信じられなかったのだけれど、この本を読んでしっかりど根付いているのかもしないと思えた。 マジョリティの英系の人口が11%という背景が、多文化主義に大きな力を与えている。ただ、出版2014/06/27