出版社内容情報
坪内逍遥『小説神髄』、一たび世にでて、壮大なロマンの世界は否定され、志厚い作家の
意味は忘れ去られた。かかるとき八犬士を創造し、大伝奇(ロマン)の物語を一本の筆に
托して江戸市民を興奮と読書の海に溺愛させた作家、滝沢馬琴。
そのロマンの根本を厖大な日記、手紙にさぐって、作家の魂と言語生活の実態をあます
ところなく解明。言文一途の論、叫ばれて百余年、日本語は枯渇の道をひた走る。
ここにあらためて、江戸知識人の豊かな語彙と堅実な表現の世界を明示し、日本語の伝統と
革新の方向を探求する。
【主要目次】
・口上―江戸の作家と言語生活と『日記』
・一 自然と人事/宗伯の婣談・帰寧
・二 改名と学芸を愛する人びと
・三 果樹・花壇・菜園、カナアリヤ
・四 住居空間の日常語
・五 宗伯の代筆、演説/鎮帯、お路平産/うなぎ手形
・六 家君御不例と薬の調剤
・七 春画と春水、読書三昧
・八 心得違いの挨拶、媳と下女/判取帳・潤筆
・九 『八犬伝』と医知識/吾山・羅文/笹屋の倅/看板彫刻
・十 身辺の語彙、つげ口・在宅・うつり/痘瘡・売居
・十一 新春の行動、七くさ粥/自然と遊ぶ/菓子の世界
・十二 生活の中のことば、豊かな漢字語の世界
・十三 〈株板〉売渡し・〈曲亭馬琴〉誕生、お路小産/琉球使節・神在餅
・十四 視力の衰え、学究と読書の日々/ダラ便・染筆・消光
・十五 天災・百姓一揆/水瘡・もんぱ足袋/『江戸作者部類』
・十六 江戸大火・類焼/右眼失明/身辺雑記
・十七 大病克服/江戸の生活語のさまざま/信心の応端
・十八 衛生の業、宗伯、終焉の記
・十九 社会状況、凶荒・行倒れ/万八桜の賀筵
・二十 瞽者ハ管カラズ ― 馬琴の心象風景とお路
・二十一 崋山・春水・種彦の死/大火・俗習・黒船着来
・二十二 お路、代写に家庭に奮闘/玉落払・十姉妹・虎子
・二十三 御簾中様御逝去/読書・小猫・湯あみ・宿熱/縁談・関帝籤
・二十四 馬琴の闘病とお路の行動・存在
・二十五 語彙考証―絨入・腰付挑灯・ねぶと・不熟・月の雫
・二十六 馬琴ノ死―御息絶被成候
・二十七 主なき滝沢家、その言語生活―朦中・笊出・四十九餅
・二十八 無恙迎新年、太郎と夜遊び仲間
・二十九 落索の語彙―御小水・下駄・留主
・三十 『日記』、最終〈嘉永二年五月三十日丙寅〉を読む
・三十一 馬琴とその手紙(1)―老拙・小生・貴兄・貴君/只野真葛
・三十二 馬琴とその手紙(2)―厄会・老婆心・殺風景/慣用句
・三十三 言語生活の舞台と特色
・三十四 余論(1)―近代作家と『日記』と馬琴像
・三十五 余論(2)―馬琴編『俳諧歳時記』小見
・馬琴、滝沢瑣吉略年譜
・あとがき
・参考資料
・図版目録
・検証語彙索引
内容説明
坪内逍遙『小説神髄』、一たび世にでて、壮大なロマンの世界は否定され、志厚い作家の意味は忘れ去られた。かかるとき八犬士を創造し、大伝奇の物語を一本の筆に托して江戸市民を興奮と読書の海に溺愛させた作家、滝沢馬琴。そのロマンの根本を厖大な日記、手紙にさぐって、作家の魂と言語生活の実態をあますところなく解明。言文一途の論、叫ばれて百余年、日本語は枯渇の道をひた走る。ここにあらためて、江戸知識人の豊かな語彙と堅実な表現の世界を明示し、日本語の伝統と革新の方向を探究する。
目次
口上―江戸の作家と言語生活と『日記』
自然と人事/宗伯の〓(いん)談・帰寧
改名と学芸を愛する人びと
果樹・花壇・菜園、カナアリヤ
住居空間の日常語
宗伯の代筆、演説/鎮帯、お路平産/うなぎ手形
家君御不例と薬の調剤
春画と春永、読書三昧
心得違いの挨拶、〓(よめ)と下女/判取帳・潤筆
『八犬伝』と医知識/吾山・羅文・笹屋の悴/看板彫刻〔ほか〕
著者等紹介
杉本つとむ[スギモトツトム]
1927年横浜生。早稲田大学文学部卒業。早稲田大学名誉教授。文学博士(東北大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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