内容説明
近世は、ごく普通の人びとのあいだでも「病にかかったら医師に診てもらう」という考えが浸透していった時代である。しかしこの時代、公儀=幕府・藩は医療知識の獲得、社会への普及・提供に積極的な役割を果たすことはなく、社会全体を視野に入れた医療システムは、ついに構築されなかった。そうしたなかで、医学の発展を主導したのは、藩医身分の者たちだった。そこで本書は藩医たちに焦点を定め、その身分=生業の特質、知識や技術の獲得・継承と社会への普及のありようを明らかにし、さらにその実態が近代の医療制度をいかに規定し、継承されたかを論じる。
目次
第1部 藩医の身分と職分(知識・技術の所有と身分;藩医の職分とは何か―伊勢崎藩医の事例から;江戸の眼病療治―福岡藩医田原養卜「眼目療治帳」を素材として)
第2部 近世の医学教育と医療環境(地方藩医の身分存立と学統―米沢藩伊東家の事例から;江戸時代の医学教育―米沢藩の事例から;鳥取藩在村の医療環境―嘉永・安政期「在方諸事控」を素材として)
第3部 近世近代移行期の医療環境(医療環境の近代化過程―維新期の越前国府中を事例として;明治初期新川県の医療環境;近代医制の成立と漢方医―服部甫庵の事績をめぐって)
著者等紹介
海原亮[ウミハラリョウ]
1972年、大阪府生まれ。住友史料館副館長。2003年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。主要著書:『洋学史研究事典』(共編、思文閣出版、2021年、第34回矢数医史学賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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