内容説明
了以・素庵による朱印船貿易、高瀬川・保津川・富士川の開削―、近世角倉一族は大商人・事業家として広く知られている。しかし本姓が吉田で一族の本流は医家であること、「角倉」の名は京都・瑳峨の地での土倉・酒屋業に由来すること、またその一族が美麗な古活字版・瑳峨本の出版、和算の発展に果たした文化的な功績、あるいは幕臣としてのあり方などは思いのほか知られていないだろう。本書は現代の角倉イメージにとらわれず、文化・技術の総体の中で近世の吉田・角倉一族の業績を俯瞰的に検討。多彩な分野の研究者のみならず、近世の技術の継承者たる職人・技術者も含む26名の論考を収録する。
目次
第1部 吉田・角倉家の系譜
第2部 吉田家の医業
第3部 社会基盤と角倉
第4部 海外貿易と船の技術
第5部 算術
第6部 瑳峨本と古活字
著者等紹介
森洋久[モリヒロヒサ]
1968年生。東京大学理学系研究科情報科学専攻博士課程退学。博士(情報理工)。国際日本文化研究センター文化資料研究企画室准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
10
企業家・算術家・文化人といった複数の性格を備えた角倉家について、多種多様な視点から検討を加えた論集。角倉・吉田家の系譜と中世土倉業の地縁的組織「嵯峨土倉中」を検討した論考(河内将芳)、洛中惣構「御土居」の近世管理体制を史料紹介した論考(中村武生)、角倉了以の保津川開削について現地遺構「水寄せ」を紹介した論考(豊田知八)などを興味深く読んだ。ただし、短すぎるくらいの論考が次々と並ぶ内容は、全体的に多様すぎて収拾つかないところも。註と本文の関係がズレている箇所も多い。使いどころがちょっと限られる一冊です。2021/02/01