出版社内容情報
開け放たれた戸の先で
夕映えに染まった浮き雲と
正午を迎える青空とを
半々に見ている
(「怪の鳴る」)
「硬質な詩語たちの佇まいはあまりにも儚い。瞬きの美しさ。しかし奥深く響いては余韻を残し去る音楽のようだ」(広瀬大志)、「ささやかな日常を印画紙としているのではない。(…)夢が夢を見ているかのようなヴィジョンがここにはあるのだ」(岸田将幸)。記憶の底を照らし出す、29篇の明滅。カバー写真=著者
水下暢也[ミズシタノブナリ]
著・文・その他
内容説明
第56回現代詩手帖賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
際皮
2
恍惚さを感じさせる表現が多い。「とくにない」の、〈か細い無駄口は止んで/甍造りの祠と丸い敷石が見えた/だまになった霧は胸元ではだけた〉の表現には、素晴らしいものを感じた。2023/05/21
刻青
0
今どき珍しいと言える純粋詩寄りの詩集。一つ一つの言葉に精度の高い注意を凝らし、美しい小品たちに仕上がっている。やけに生々しい散文ばかりの詩壇において、このような一つの「作品」を作るとも見える態度は、気持ちがよく、詩を読む喜びを感じる。絵が浮かびそうで浮かばない、現実と不思議に隔たった距離感。しかし、ちょっとした手の伸ばし方で簡単に触れてしまいそうでもある。こわれてしまいそうでもある。「体当たり」「からかい」といった純度の低い言葉を弾いていけば、さらに美しいものになりそう。これからついていくことに決めた。2021/08/25