出版社内容情報
待っていればいい
詩はきっとやって来る
文字に隠れ
声にひそんで
彼方から
あなたのもとに
「詩も人間の活動である以上、詩以外のもろもろと無関係ではいられない。詩を生き生きさせるのは、言葉そのものであるとともに、無限の細部に恵まれたそのもろもろなのではないだろうか」(あとがき)。『二十億光年の孤独』から60余年、あらゆるかたちで詩を問いつづけてきた谷川俊太郎だからこそ書きえた達意の筆尖。新作36篇を収める、著者初めての書き下ろし新詩集! 装幀=毛利一枝
谷川 俊太郎[タニカワシュンタロウ]
著・文・その他
目次
隙間
台が要る
朝
朝陽
跛行
詩よ
担々麺
私、谷川
待つ
詩人がひとり〔ほか〕
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
115
今年発行された谷川さんの詩集。どの詩も詩をテーマにしているところに特徴がある。残念なことだが、現在の日本では詩はほとんど読まれなくなってしまった。詩が人の心を揺り動かすことも減っていると思う。そういった状況に危機感を覚えながらも、言葉の力を信じて、詩を紡ぎ出していこうとする谷川さんの強い意志を感じた。「活字に閉じこめられた詩よ おまえはただいるだけでいいのだ 何の役にも立たずそこにいるだけでいい いつか誰かが見つけてくれるまで」(「詩よ」より)2015/10/31
Y2K☮
44
世間で持て囃されるのは芸術ではなく芸術家の芸術である。詩ではなく詩人の詩である。著者は詩を信じている。だがそれを言葉に移し替え、商売にしている己には懐疑的だ。偽りと真実の間で戸惑い、罪の意識に揺れている。詩を書こうとしたらそれは既に詩人の詩であって詩そのものではない。言葉にならないポエジー(詩情)だけが正当なのか。答えなんて出ないけど、私は詩人が好きだ。誰も彼も天の啓示に恵まれつつ、実生活は惨憺たる有様である。なりたくはないし絶対なれない。でも常識を嘲笑って人なんてこんなもんさと管を巻ける彼らが羨ましい。2015/12/11
けんとまん1007
24
稀有な存在であり、まさしく詩人である絶対的な存在。それが、自分にとっても谷川さん。畏敬の念と、親近感と両方を感じる。本当に、詩というものが、どんどん遠くへいってしまっているように感じている。今の時代、言葉自体が、単なる消費物となってしまっているようにも思う。だからこそ、谷川さんの存在が際立つのではないだろうか。谷川さんとレベルは違うが、詩の力を信じている自分が、いる。2016/06/03
シュシュ
17
とても面白かった。今まで読んだ谷川さんの詩集の中で一番好きかもしれない。「隙間/…私たちはこうして生きているのだ 心配事を抱えながら 束の間幸せになりながら 大きな物語の中に小さな物語が 入れ子になっているこの世 その隙間に詩は忍びこむ 日常の些事に紛れて」ユーモアがあって、円熟した感じの言葉たち。そばにおいて時々読みたい本。2015/06/27
pirokichi
8
谷川俊太郎さんの詩に就いての詩36篇。「言葉」「意味」「詩」「散文」「死」…読みながら、頭の中に木の葉が降り積もる。その中にとても大切な一枚があったのにどこに紛れ込んでしまったのか探し出せない。いつもそう。〈そして詩は 言葉の胞衣に包まれて 生と死を分かつ川の子宮に ひっそりと浮かんでいる〉〈活字に閉じ込められた詩よ おまえはただいるだけでいいのだ 何の役にも立たずにそこにいるだけでいい いつか誰かが見つけてくれるまで〉 あとがきもとてもよかった。 2020/12/10