内容説明
鎌倉の海岸に漂着した名もなき欠片、そこからこぼれ落ちる無数の言葉―詩人が拾い集めた非人称の断片が、いま写真とともに封じ込められ、新たな旅をはじめる。波打ち際で生まれた連作散文詩。
目次
1 生命あるものの濡れるところ(それらは、自らが何かであることを…;海棲の貝類は完全変態を遂げる… ほか)
2 時のコラージュ(言葉がピサの斜塔のように…;「透明」は、どうすれば… ほか)
3 世界が生まれたとき(世界はヒョウタンから…;鶴岡八幡宮から若宮大路を南へ… ほか)
4 海の中道(日々を生きていると、思うことがある…;波の音が絶えないところでは… ほか)
5 私たちは海辺に住まう(かつて、熱心に風の名を…;波頭に万象の片影の飛沫が… ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
89
海と海辺をテーマにした散文詩。これまで考えたことはなかったが、この本を読んで、海辺は日常(散文)と非日常(詩)がさざめき合うところなのだ、とわかった。漂流物にむける作者の眼差しが面白い。一度は日常生活の中で意味を持っていた散文的な道具が、海を漂うことで意味を剥ぎ取られた漂流物(詩)に変わってしまう。自分の中にある海を生き生きと甦らせてくれる本だった。2014/08/07
きりさめ
4
所有、人間と物との関係について。持ち主がいらないと思った時から物は、名前を失くしあてどない漂流を始める。それら漂流物が再び人の目に触れられることがあるとしたら、何もかも洗い流されてまっさらなものになったときなのだろう。2019/11/23
Э0!P!
2
鎌倉の海岸に漂着したものを見て浮かんだ思念を綴ったもの。漂着物の運命を想う。2023/11/08
Guro326
1
詩、というよりかは散文。/漂流する巨大な島。海と陸との境界。風の名前。物の名前。持ち主がいなくなったら漂流する。海岸線。そしてそこに住まう。2014/07/13