内容説明
神秘と謎に包まれたアメリカ文学最後の巨匠ポール・ボウルズ。詩人、現代音楽作曲家、ドラッグ愛好家、そして残酷にして夢幻趣味に満ちた小説家。NYを離れて半世紀、モロッコに隠遁しつつ、「失われた世代」とビートニクを結び、今日なおベルトルッチを始めとする若い映画人、文学者に霊感を与え続けるその多彩な文学的足跡を一挙掲載。
目次
特別寄稿(ポール・ボウルズ読者への言葉)
ポール・ボウルズの作品(蠍;水の際;コールド岬の記録;ドーニャ・ファウスティナ;もし僕が口を開いたら;会衆の彼;友情の時間;アラール;雨は降るがままにせよ;孤独の洗礼;無の近傍ほか2篇)
ジェイン・ボウルズの長篇(ふたりの真面目なレディ)
ポール・ボウルズをめぐって(砂の教訓;「コールド岬の記録」を訳して;黒い沈黙;早すぎたポストモダニスト;砂漠の音響;世界の既知へ ほか)
アメリカにおける評価(ポール・ボウルズの作品における時間の機能;テクストの中の子ども;異郷―ポール・ボウルズの子ども時代の心象風景 ほか)
資料(ポール・ボウルズ年譜;ポール・ボウルズ書誌 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らぱん
32
父親の虐待を受けた彼は自己防衛として虚構の中で生きることが習性になり、強いエイディプスコンプレックスが創作活動の根源にあったことが、晩年の彼自身の言葉から窺えた。寡作な作家にバートルビー的なものを見たが、書けなくなったのだとしたら、心は安らかになったのではないかと想像した。彼の作品の特徴でもあり魅力でもある真実と幻想を区別せずに描く曖昧な両義性は、そこで覚える感情の原因がどちらであれ感情に変わりはないという達観で、違いを探せば孤独に還元されるものになる。幻想と共に生きる人生の肯定と絶対の孤独を想った。↓2019/07/31
渡邊利道
3
現代詩手帖の特集。短編と、翻訳家および小林康夫や丹生谷貴志、城戸朱理などの論を読んだ。まあほぼほぼ自分の関心にボウルズを惹き付けて読んでいる論でそれほど参考にはならないのみならずこういうのっていいのかなあとか疑問に思わないではない。もっとも丹生谷の文学は音楽を憎む権利があるというエッセイはやっぱり面白いので困ってしまう。短編はまあ似たような感じでそろそろ飽きてきたかも。2017/03/06
もりまーりー
1
めっちゃ面白かった。☆☆☆☆☆ モロッコ、ビートニク、亡命者?に興味がある人は。旅、異教、土着、奇妙な舌触り。
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