内容説明
本書では、複数詩人ペソアの主要な異名者3人と本人名義の代表作を収録した。
目次
フェルナンド・ペソア詩篇
詩集“啓示”(抄)
アルベルト・カエイロ詩篇
リカルド・レイス詩篇
アルヴァロ・デ・カンポス詩篇
散文
詩人論・作品論
著者等紹介
澤田直[サワダナオ]
1959年生まれ。立教大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
37
本人と彼の三人の代表的異名者(アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルヴァロ・デ・カンポス)たちの代表作を収録している。/ 澤田先生が解説で言っているペソア・ウィルスという点で言えば、『不安の書』(高橋都彦訳/新思索社)の方が数段多かったのではないか? 感染者の一人としては、同書に比べるとやや食い足りなかった。 もちろん、期待が大き過ぎたせいだとは思うが。/ 【ペソア・ウィルスとでも呼ぶべきものが確かに存在する。 ー中略ー ペソアの作品の魅力は、その一句一行が他人の書いたものとはとうてい→2024/09/30
マリカ
22
「ポルトガルの海」の池上訳と比べながら読んでみた。オリジナルを知らないから、翻訳の忠実さは分からないけれど、私は本書の澤田訳の方が訳語が柔らかくて好き。訳を比べながら読んでいると、澤田さんがペソアを読みたいばかりにポルトガルを勉強した気持ちがよく分かる。ペソアの言葉を自分の手でポルトガル語から自分の言葉に写し取ってみたい。2012/08/28
マウリツィウス
20
【"Fernando Pessoa"】ジャンル無限参照化を可能とした《詩篇集合例外形態》を「ペソア」と定義-古典主義を定義したのではなく《超克》を意味-したがって聖書系譜にすら本来数えられることはない。ブエノスアイレス詩人の血統と鼓動をも反映する詩篇文体に意味が見出せるだろう。多重層解釈を前提とするポルトガル語の機能性をも《引用》している。つまり無限派生していく-ボルヘスの詩篇性質をも継承化に含められる「古代ユダヤ教」の反映論を蓋然継承-《復活した》司書と「ペソア」この二重誕生が産出する「世界と統治」-。2013/10/21
長谷川透
16
ペソアはこの名の他3つの異名を名乗り詩を書いていた。多重人格者だった彼は他の3つの人格の統合者であったのだ。彼の書く詩には常に「私」という者の不在がテーゼとしてあり「私」と名乗る者たちを全て剥ぎ取ったときに残る何ものか――それを魂と呼んでもいいのかもしれない――への接近を孕んでいるように思う。「お前という全くの虚無はお前のもの」とペソアは自らにそっと呟く。自分を知りながらも自分ではない。日常の営みさえも夢の中のように思う。それでいいとペソアは思う。何ものかであるということは牢獄の中にいることなのだからと。2012/11/12
マウリツィウス
15
【ペソア詩論】古典的方法論を拒絶したことでペソアが成立したのではなく古典文法の反転作用を利用する主義が黙示録終末支配論/旧来文学残骸、それを改変利用したのが《ペソア・ウィルス》意味、そしてペソアは三分割された複合詩人である仮想作者となるも古代作家的記号還元を拒んでいる。すなわちマタイ/マルコ/ルカ構図を再現参照する聖書=ビックバン以前領域を形成した。シェイクスピア象徴を断つために古代ギリシャ語に先立つオリエント起源記号を選択し現代文明/古代世界を無限反響させる。この深化領域がジョイス系譜を遺産へと変えた。2013/07/02