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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリカ
35
詩人フェルナンド・ペソアの異名ベルナルド・ソアレスによる散文集。「人生は意図せずに始められてしまった実験旅行である。」「私は、ほとんど考えることもなく本能的に、こんな風に自分の人生を作りあげたので、自分自身にとってでさえ、はっきりとしない私という個人になってしまった。」「もうずうぶんまえから、私は私ではない。」:詩人は「わたし」という空虚を言葉にすることに一生を費やした。そして、詩人の遺した断章の一つ一つが、わたしに巣食う空虚を解放してくれる。あまりの心地よさに、まるで夢の中で詩人と対話している錯覚に陥る2012/07/24
tomo*tin
19
ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの詩文・散文と共に「異名」ベルナルド・ソアレス名義による散文を収録。彼の中には幾人もの異名者が存在したのだと言う。「われわれのひとりひとりが多様で、多数で、自己自身の増殖」であり「私は私ではない」のであり「私は存在しない」と語る彼の言葉はどこまでも静謐で胸を抉る何かがある。愛に焦がれ無垢に焦がれ人に焦がれる反面、それらが手に入らぬ絶望が奥底に沈澱している。「人生を遠くから眺めよ」と言う彼らの目に映る世界は何色だったのか。私は本当の詩人の持つ恐ろしさにひれ伏すばかりだ。2009/05/11
おおた
16
精神的に落ち込んでいるせいか、前半の「断章」は引き込まれるほどではなく、ただ共感した。「熱烈な読書家でありながら何一つ覚えていない」なんて、特に。「不穏の書」にも憂鬱な通奏低音が響く。ポルトガルはこんなにも絶望の街なのかと少しうんざりしながら読み終えた。いつかもう一度、わずかに水分を含んだ青い空の下で読むだろう。2019/07/20
莉庭Reethi
16
★★★★★★儚い言葉、零れ落ちる言葉、無関係のいくつかの隠喩。漠然とした不穏さがそれらを別の時間に結びつける。 ペソアという詩人が存在したのかしなかったのか、またはそんなことからは超越した別の存在のあり方だったのか。私は生きることなく、そして同時に死ぬこともなく、移ろう景色を通り過ぎていた。通り過ぎた痕跡もなく、すべての足跡はあらかじめ失われていた。 内と外の両方で、同時に何かが溶けあい、私は誰でもない人だった。2015/05/01
抹茶モナカ
16
ペソアの遺稿のうち、ソアレスという異名の作家を設定して書かれた散文集『不穏の書』と、いろいろな詩から集めた『断章』収録。この『不穏の書』の完訳が『不安の書』なのかな。抜粋チックだったし、『不穏の書』。ペソアの倦怠についての筆致の冴えは、凄いものがある。僕は精神科外来で自分の倦怠感について、精神科医に訴えていたけど、それが恥ずかしくなるくらいの深い倦怠の中、コツコツ散文を書いて、死んでいったのだな、ペソア。2014/08/09
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