内容説明
ショパンの「舟歌」に想を得て構想されたという本詩集は、現在という時代の相貌を痛切に引きうつす鏡である。死を胚胎した日常に、舟歌のリズムが歩みを合わせる。『環の光景』『磔刑の夏』以降、静かに紡ぎ出される注目の新詩集。
目次
いつも目を細めて
ビーチホテル
故郷
一期
青空
舟だまり
雪の日に
冬の手紙
封印
たまゆら
コスモス
幻の夏
港町で
小さな窓
行く手
今日あなたはどこで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
12
読友さんに教えられて一読。太平洋戦争中に詩作を始められたという今年で御年98歳になられる詩人、平林敏彦さんは創価学会員である。「詩はお金にはならない。詩にとりつかれ、詩を忘れられないばかがいたということ」と詩人は語る。本作は、黒い表紙の与えるイメージに通ずる、複雑な生い立ちや戦争や死を思わせる、深い深い海の水底のような、ひとりぼっちで歩む冬の日暮れのような作品群のなかに、一筋の希望をも感じさせるものとなっている。「帰らない釘づけの五月」「残りの日々があまく腐りかけている朝」などの詩的な言葉に打たれる。2023/03/29