出版社内容情報
「仮想高校生としてコンビニを発見した渡辺は、その仮想のまま無の探求をつづけるべく運命づけられている」(高橋睦郎)。
アニメ、ゲーム、コンビニ、ケータイ・・・・・・。現代的なガジェットを作動させ、並行世界から幾つもの〈ワタナベ〉がやってくる。
時代の孤独感、漂流感を、乾いた文体で映しとる。
解説=北川透、城戸朱理、和合亮一、河野聡子
渡辺玄英[ワタナベゲンエイ]
著・文・その他
目次
詩集“水道管のうえに犬は眠らない”から
詩集“液晶の人”から
詩集“海の上のコンビニ”から
詩集“火曜日になったら戦争に行く”全篇
詩集“けるけるとケータイが鳴く”から
詩集“破れた世界と啼くカナリア”から
未刊詩篇
散文
作品論・詩人論
著者等紹介
渡辺玄英[ワタナベゲンエイ]
1960年生まれ、福岡市出身。96年、詩誌「九」(北川透・山本哲也共同編集)に参加。現代のサブカルチャーの「弱い、呟きのコトバ」を用いた詩集『海の上のコンビニ』(00年)で注目される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kentaro mori
4
言葉を発した直後、後ろから声、ツッコミが。それは、もう一人の「私」、もう一人のアバター。●火曜日になったら/戦争に行く/野ウサギがはねる荒野の中を/画面の野ウサギにカーソルをあわせたら/引き金を、ひいてくらさい/ピコピコと動くのは、夢の中だけれす/きょうがいつだか わからないけど/(ぼくの弾丸は届くだろうか?/(ぼくのことばがとどかないように?/(わかりませんわかりません2018/07/08
岡部淳太郎
0
正直言ってはじめはまるで馴染めなかった。これは詩としてどうなんだという気持ちにすらなった。だが、読み進めてゆくうちにこちらの慣れかどうかわからないが、次第に詩の世界に入りこんでいった。それは著者本人の散文を読むことで、決定的になった。言ってみれば現代という時代ゆえの詩であり、はじめに馴染めなかったのもこちら側に詩というものに対する古い先入観があったからだと思われる。まあ、自分ではこういう詩を書こうとは思わないものの、色々示唆を与えられる部分もあった。その点には感謝したい。2024/06/22
k
0
コンビニやケータイ、ネットを媒介に、ぼく(わたなべ)が見るセカイも、ぼく自身も"複製"されていく。エヴァンゲリオンなど時代のサブカルチャーを詩の表現に積極的に取り入れ、作品のスパイスにしている。それらが空虚性や仮想性を持っていた20年前の価値観であれば、より実感を持って読めたように思う。今はバーチャル世界といっても、現実と地続きで身体性を伴うため、こういう詩はかえって新鮮。今生きている世界も誰かの"モーソー"の複製なのかもしれない。84p〈あとは笑うふりをしながらせかいかを/せめて空白で終わらせたい〉→2021/11/03