内容説明
今日の代表的詩人を網羅し、時代の言葉の可能性を最も遠くまで展望した、最大かつ最高度の詩集シリーズ。本書には生前最後に刊行された『宿恋行』と没後刊行された『難路行』、「拾遺詩篇」のほか、著作集未収録の評論エッセイを収録した。
目次
詩集「宿恋行」
詩集「難路行」
拾遺詩篇(鏡;天使;往路)
翻訳詩篇
詩論・エッセイ(文体的思考;遊びによる自由;私のユートピア ほか)
作品論・詩人論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
19
こちらも駄目になった鮎川信夫が石原吉郎の墓前で彼との対話を思い出したり、「荒地」時代の友への手紙という形式で駄目になった自分を曝け出す。それは死ねなかった男が「寝ていた男」だったということで、大衆的な欲望に染まっていく。過去の詩を振り返り弁明するような詩が多い。むしろ若い頃の翻訳詩が面白い。エリオットの「荒地」とか。影響を受けた詩が伺える。また詩より評論やエッセイの方が面白い。2024/10/31
misui
4
「きみの花柄のパンティを脱がせるためだったら/……詩なんかいつだってすてられるさ」(「ミューズに」) ずるずると生を重ねてしまった老年の詩には自嘲が強く感じられる。それは批評精神からのものであって、ただし対象が自分自身となれば、衰えたものが衰えゆく現在を歌うというペーソスが前に出てくる。一時代を死に損なった詩人のドキュメントとしては得がたいものである。「「きみが詩を」ではなく/詩がきみを/こんなにも早く終えたことを悲しむ」(「詩がきみを」)2014/06/01
呉下の阿蒙
1
駅前通りを抜けて/時間論2025/06/02
endormeuse
1
正午は安全な時刻である、/岩や空や、波や砂や、花の香りのする一日、/慟哭する場所はどこにもなかった。2020/08/27
May
0
このまえ読んだ田村隆一は鋭く歯切れ良い感じがしたけど、鮎川信夫はつかみどころがなくてもやっとする。昨日も今日もとても暑かったけれど、そういう環境で読んだからか、彼の詩の言葉もシャワーを浴びたら流れ落ちてしまって、でも石鹸のにおいみたいに妙に残っている。しばらくは嗅いで暮らそう。あと、評論の中で「俺は大体の詩は文体でサクッと目を通して済ましている」的なことを書いていて、詩を集中して沢山読めない僕としてはなんとなく心強く思った。2013/08/10