内容説明
坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、北野武の豪華ハイライト・シーン…。大島渚監督が描いた映画の感動がスチール写真と読みやすい文章で甦る。
目次
1 影さす牢格子―クリスマス前夜
2 種子と蒔く者―クリスマスの朝
3 剣と人形―クリスマスの夜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スズコ(梵我一如、一なる生命)
16
凄いものを読んだ!と心の底から思った。河合隼雄さんがこころの天気図の中で影についての良書と紹介されていたが、影についてだけでなく、人間の心理、感性について深い理解と共感に基づいて、豊かな物語が語られていた。真珠貝の例えはここからきたのかと納得。著者はユングとも交わり、アパルトヘイト禁止交渉にサッチャー首相に請われて参加するなどの貢献の一方で、死後には自身の描いた成果は盛り付け過剰と批判され更に英から南ア航路で預かった未成年を妊娠させたと言われている。前者はそう言う人じゃないとこういう物語は書けないよなと。2025/02/24
まつき
5
子供の頃映画を見て以来ずっとまた映画を見たいと思っていたが本を読んでより深く映画を理解できそうな気がする。戦場の話なのに叙情的で美しく人間の精神や美意識が書かれていて本当に読んでよかったと思える作品だった。2016/01/30
河内 タッキー
4
映画は映画で素晴らしい作品だが、原作を読むことで映画でのちょっとしたシーンにも、理由があったのかと再発見があった。デヴィッド・ボウイ演じるセリアズがなぜあえて下手くそに歌うのか?銃殺刑に処される時になぜ目隠しをされるのを拒んだのか?等々。 基本的に映画は原作に忠実だ。原作を読むことでより味わい深くなる。 不思議なことに戦争ものと言うと、暑い夏に読みたくなり、また蝉の鳴き声の中、汗をかきながら読むとしっくり来るものだが、ここ数日は涼しくなったせいか、後半は少しペースダウンした。2015/08/31
lily
2
戦中のジャワ島。日本軍も俘虜も極限状態にある中で、様々な思いが交錯する。何もかもギリギリな中に、ジュネーブ協定や戦時国際法は虚しいばかり。ルールを守った戦争というのは論理矛盾なのだ。今は亡き大島渚監督とデビット・ボウイが出演し、何よりもハラ軍曹のビートたけしが強烈なインパクトを残した映画の忘備録として。2016/01/24
紙狸
1
作者のローレンス・ヴァン・デル・ポストは南アフリカ出身。三部からなるこの作品は、日本人とは何者かという問いに様々な角度から迫っている。ユング心理学、文化人類学の考え方も用いられる。語り手の「わたし」と登場人物の「ローレンス」はイギリス人という設定。第2部に出てくる「セリエ」は南アフリカ出身で英軍に加わったとされる。物語が主に展開するのは、第2次大戦中のオランダ領東インドのジャワだが、南アフリカ、イングランドも舞台となる。多くの文化が絡み合い、衝突する。ある文化に属する人間が、異文化圏の人間を理解する。2018/01/12