内容説明
心はどうはたらくのか?大昔から問われてきたこの問題に対して、『心の社会』は革命的な回答を与えている。本書は、ミンスキー教授が長い間練りに練った、人間の知能についての新しい考え方を示したものである。ミンスキー教授は、心とは、「一つひとつは心を持たない小さなエージェントたちが集まってできた社会」と提示する。本書の内容は、子どもの描く絵から自己意識に至るまで、あるいは、何かを否定するような思考のもつ力から日常の思考におけるユーモアの役割に至るまで、多岐にわたっている。また、わかりやすい図がたくさん挿入されており、読者の想像力を直接かきたてるような、いわば心の世界への冒険物語としても読むことができる。
目次
心の社会
全体と部分
争いと妥協
自己
個性
洞察と内省
問題と目標
記憶の理論
要約すること
パパートの原理
空間の形
意味の学習
見ることと信じること
定式化の直し
意識と記憶
感情
発達
推論
言葉と考え
文脈とあいまいさ
トランスフレーム
表現
比較
フレーム
フレームアレイ
言語フレーム
検閲エージェントと冗談
心と世界
思考の領域
心の中のモデル
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はまななゆみ
14
「心はたくさんの小さなメカニズムからなる社会」との見方はとても腹に落ちた。確かに自分の心の状態を明確に言うことは難しい。人間社会が複雑なのも必然かもと考えさせられました。2019/11/23
シタン
14
人工知能の父・マーヴィン・ミンスキーは、「心は機械か?」の問いに対して一点の曇りもなくイエスと答える。「むしろ問題はどういう種類の機械か?である」という。心とは「それ自体では考えることのできない小さなもの(エージェント)とそれらのインタラクションから構成された社会である」とし、それらを、小さな節から構成された本書で述べる。それぞれの節は非常に読みやすいのだが、それらが合わさることで深遠で複雑な理論が目の前に現れる。 面白いことに、フロイト、ピアジェ、釈迦、バートレット等からの頻繁な引用がみられる。2018/07/08
roughfractus02
11
思考の最小単位が複雑なインタランションで「社会」を構成し、心を生み出すという説を立てた著者は、脳=心の機能を認識的な過去データ処理という通念から感覚と期待を記述する未知の探索へと大胆に転換する。本書はエージェントと称するその最小単位の様々な役割や組合せ、その階層化や跳躍、さらにエージェンシーによるエージェント行為の自覚化等の過程によって心がSociety of More(「もっとの社会」)に向かう動きを読者自身に辿らせるように進み、情報の入出力処理(ノーム/ニーム)で心をシミュレートさせる(1987刊)。2018/07/18
ちゅん
9
人工知能の権威、マーヴィン・ミンスキーによる名著of名著。人工知能を学ぶ上での重要な一冊かと個人的に思います。人間の当たり前にできる「積み木を積む」「言葉で察する」というものは、非常に複雑な処理がされています。ミンスキーはこの処理を比喩として次のように表現しています。特定処理をするエージェントが複数いて会社のようなネットワークを組んでいる。30章、500ページ余りと通読は大変ですが飽きさせない内容かと思います。個人的には27章の「冗談とユーモア」の話が印象的でした。2017/11/18
はにまる
6
人工知能の父、マーヴィン・ミンスキーによる心の科学。人工知能といっても今流行りの数理統計学的なアプローチよりも、心理学寄りのイメージ。ただし「心は果たして機械であろうか?この問いに対しては、私は一点の曇りもなくイエスと答えてきた」と述べられているように、機械の構造を説明するがごとく、還元主義に徹している。謝辞にクラーク、ハインライン、アシモフ、フレデリック・ポールの名前があったり、ジョイスやヴォネガット、チェスタートンの引用があったり、幅広い教養に痺れる。2020/01/03