内容説明
人生半ばを迎えた主人公たちが、ふと過ぎし日を想う時、その何気ない言葉やしぐさに心の内を垣間みる…どこか懐かしく、そしてほろ苦い16の小さな物語。
著者等紹介
出久根達郎[デクネタツロウ]
1944年茨城県生まれ。92年『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞を、93年『佃島ふたり書房』で直木賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ryoichi Ito
5
(結婚前,娘がアルバムから自分の写真だけ剥がして持って行った。)残っているのは,おれとお前の写真だけ。隙間だらけのアルバムを見た時は,家族ってこんな風に離れるのかって,悲しかったよ…なくなったお前の写真は残っているのに,一人娘のそれは無い。これからは,またお前と半分コだ。そちらは,変わりないか?…うーん,短編の名手だなぁ。2018/08/31
アト
4
文庫本サイズだがハードカバー、という作りが物珍しくて手に取った。小型愛蔵本とのこと。文字の大きさや間隔は単行本のそれで、ページが正方形に近い。そのため縦の文字数がちょうどよく目で拾いやすかった。「私は、残酷な手紙を書かせていたんですよ。丸か罰かのどちらかを書けって。どちらでもないことを書くのが手紙なのにね」最近ぽつぽつと手紙を書く機会があった。自分もどちらでもないことばかり綴っていたかもししれない。2017/02/23
ume-2
4
三月書房小型愛蔵本シリーズで。背表紙に出久根さんの名前を見て手に取りました。相変わらずの古きよき言葉使いにほっとします。(「豌豆」が読めずに自嘲しました。)人生はやっぱり合理的にばかり考えられないのだと、なぜか嬉しくなる短編集。人生も終盤に差し掛かって、老いに追いつかれた人達のほろ苦い話「桃箸」、ほのぼのとして人間の温かみを感じられる「カーディガン」等、相変わらずの筆達者ぶり。ただ「こわれる」中の”人目をそばだてて”は誤用じゃないでしょうかね。としたら出久根さんでも思い込みはあるんだと、これは逆に嬉しい。2014/09/21
青い鳥☆彡
3
★★★★☆著者との最初の出会いは「家の履歴書文化人・芸術家篇」でした(リンク)⇒http://book.akahoshitakuya.com/b/4873763614 著者は貧しい家庭に育ち、能力があるのに進学できず中学を卒業後、東京の古本屋に就職し真面目に努力されて作家になられましたが、筆者の本を読んでいると、筆者の誠実な気持ち伝わってきて、穏やかになれます。著者の「二十歳(はたち)のあとさき」は、お薦めしたい本です。2014/09/08
wasabi
3
三月書房の小型愛蔵本シリーズの一冊をはじめて手にしたけれど、なんて贅沢な本だろう。1961年から発刊されていて、文庫本サイズなのに函入り、糸綴り、箔押しの豪華本だ。これまで様々な随筆、句、歌などが収められてきたようだが、こんな素敵な本を編んでもらえる作家は幸せだ。出久根さんらしいほのぼのした16篇に心温まる。半分実話っぽい『符牒』と『桃箸』を読むに、著者の膝の具合が気になってしかたない。ご夫婦ともにお元気でありますよう。2014/08/06