内容説明
今日、首相権力は強化され、「内閣政治」というより「首相政治」である、と多くの著作者達は言う。確かに、積極政治の展開と共に、首相権力は相対的に増大した。しかし、忘れてならないことは、この国の行政権がやはりあくまで合議体たる内閣にあり、決して首相一人のものでないということである。これは憲法上、行政権を専ら独り占めするアメリカ大統領とは全く異なり、比べようのない相違がある。事実、もしイギリス首相がアメリカ大統領のごとく独断的行動をし、「内閣連帯責任制」や「同僚たる他の閣僚」を軽視または無視するようなことでもあれば、彼の指導力はおそらくみるみる低下し、ついには辞任に追い込まれよう。そこで本書では、今日におけるイギリス首相の地位、権限および指導力を、アメリカ大統領のそれとの比較を念頭に、制度的に考察し、その強さと弱さを検討したい。
目次
序章 首相の栄光と挫折
第1章 議院内閣制と首相の地位・任務の確立
第2章 首相権力の正統性根拠
第3章 積極政治の展開と政府活動・組織の膨脹
第4章 多数党党首としての首相の地位、権限および指導力とその制約
第5章 議会操縦者としての首相の地位、権限および指導力とその制約
第6章 内閣調整者としての首相の地位、権限および指導力とその制約
補章(1) 博物館とマルクスの都:ロンドン
補章(2) 議会制度、政党政治の母国:英国