内容説明
ロシアによるウクライナ侵攻という衝撃的な出来事があり、一方個人的には久々のフランス渡航を果たすことのできた思い出深い年でした。この星の未来を信じてなお走ります。水原紫苑の365日。
著者等紹介
水原紫苑[ミズハラシオン]
1959年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科修士課程修了。春日井建に師事。90年『びあんか』で現代歌人協会賞受賞。99年『くわんおん』で河野愛子賞受賞。2005年『あかるたへ』で山本健吉文学賞・若山牧水賞受賞。17年「極光」で短歌研究賞受賞。18年『えぴすとれー』で紫式部文学賞受賞。20年『如何なる花束にも無き花を』で毎日芸術賞受賞。『女性が作る短歌研究』を責任編集(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あや
27
途中からフランスへ渡航される。私も行ったことのある地名が出てくると嬉しくなる。 財産を持たぬ鳥たちけものたちコミュニズムとは彼らの言葉2023/08/27
rinakko
3
〈わが師みな男なりけりあかねさす紫式部に史記習ひたし〉〈葉牡丹にしんじつを問ふ生まれ來て良かりしか汝不機嫌の極み〉〈フェードルゆ源氏物語に通ふ道ほの明かりしてプルーストも見ゆ〉〈白木蓮森閑と咲き戰爭の絕ゆることなき星を抱かずも〉〈立枯れの紫陽花獨り筆折りしうたびとのごとくきよらけきかな〉〈愛されず愛さず生くる天體のきららかさもて海越えむかな〉〈聖母まとふ靑さびしもよ王權にあらがふラピス・ラズリあらむか〉〈妄執を愛とよびたる千年の歷史ほろびむ小面老ゆる〉2023/08/17
月音
1
1ページに日付と一首、タイトルは『日記』でも出来事などの記述は一切ない。その日あった様々なこと、浮かんだ思いから切り取られた一瞬が三十一音に凝縮する。シンプルな構成は、詠み手と読み手の関係にある種の緊張をもたらす。これまでと違い、反戦や震災を詠み、自らの老い、死とその後のことまでも考えている歌人は静かに燃え続ける炎のようだ。後半はパリ滞在時の作歌なので、『巴里うたものがたり』(春陽堂書店)と合わせて読むと、抽象画が具象画になった印象に。⇒続2023/08/05